伝えたい言葉を伝わる言葉に

印刷

SHARE

  • Facebook
  • Twitter
  • Tumblr
  • Linked In
  • Mail

Blog


諸国をめぐる漂泊の旅の中で多くの和歌を残した西行さん(平安時代末期~鎌倉時代初期)。その辞世に「願わくば花の下にて春死なむ その如月の望月の頃」という名歌を残しています。もしも願いが叶うならば、春、桜が咲き誇っている木の下で死にたいものだ。草木の萌え出ずる如月の満月の頃がいい・・・。

年に一度の数日間の桜の饗宴が終わり、新緑、万緑の展覧会が幕を開けます。かつて弊社が刊行していたタブロイド紙「PRニュース」の一面に「百聞百声」というコラムがあり、その106回におよぶ連載の最終回で「紅一点」という言葉について筆者は次のようにふれています。

─ ▼「万緑叢中紅一点」という王安石の詩がその出典。紅一点は既に知られる。詩の意味。「一面の緑の草葉のなかに、ただ一つ赤い花が咲いている。多くの平凡なものの中に、唯一つだけ秀れたものが交じっていること。また男ばかりの中に一人だけ女が交じっていることのたとえ」(漢和中辞典)▼広報から発信される短いニュース、企業トップのスピーチ、事故の際のコメントなど時々刻々のいちいちの情報が、他社をも含めたいかなる情報にも修辞の上で傑出していること。即ち、紅一点である意気をもって発信し続けることが第一に優先されなければならない。簡潔で、かつ説得力があること。表現に深みがあり、かつおのずと社風を表すものであること▼ ─

 インターネットのあまりに急速な普及で、マスメディアはもとより個人が発するつぶやきや書き込み、動画などで、気がつけば“情報大洪水時代”となりました。情報はいわば大海の波間に埋もれてしまい、そこに在るだけでは誰も気づいてくれません。目に留めてもらうための“紅一点である意気”─ まず何よりも情報自体の創造性や独創性を高めること、その上で“伝える”ためのあの手この手の工夫や仕掛け、そしてやや大げさに言えば“戦略”─ が求められます。今や、企業や団体や行政はWEB上に情報発信基地をもち(=オウンドメディア)、ウェブサイトやメールマガジン、ソーシャルメディアなどを通じて自ら積極的に発信できるようになりました。時に新製品や新サービスの紹介、時に人事異動などの組織情報、そして時には消費者への注意喚起やお詫びであったりもします。それぞれに伝えたいことはたくさんあると思いますが、ここで「伝えるためのコツ」をほんの少々。

①    あれもこれもと欲張らずに内容を「絞る」。
②    キーとなるポイントがうまく伝わる言葉と提示の順序を考える。
③    そのポイントに説得力をもたせるためのデータや具体策などを準備する。

情報発信の環境が整い、組織のトップや役員、従業員の方々が動画を含め社外に向けて登場し、話しかけること(パブリックスピーキング)も大幅に増えたことで、今や組織のコミュニケーション力が組織の価値やレピュテーション(評判)を大きく左右する時代となりました。もちろん、こうした環境で情報発信する際には社会常識や倫理を逸脱しないこと、社会の期待に応えることが大切ですし、一方で外から干渉される、侵入され悪用されるといった大きなリスクにも常に留意しなくてはなりません。

萌え出ずる新緑の候、それぞれの組織には新たなメンバーが加わります。「新しい酒は新しい革袋に盛れ」ということわざもあります。紅一点である意気をもって、せっかくの伝えたい言葉をしっかりと「伝わる言葉にする」ための、知恵と努力と工夫をどうか怠りなく。