食品への異物混入騒ぎ 冷静な判断を

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さまざまな食品への異物混入で騒ぎが拡大している。異物混入は「絶対にあってはならないこと」なのかどうか議論の分かれるところだが、製造する側、売る側の企業にとっては完全にゼロにするのは難しい。

問題は事態への対処だ。どの企業もさまざまな事態を経験して、また他社の事案を研究して、いまは対処のためのマニュアルを備えている。異物混入ならば、原則は個別対処である。顧客から指摘があった場合、当該事案がその時だけその商品だけに起きたものなのか、もしかしたら他の商品でも同じことが起きているかもしれないのか、判断をしなければならない。どっちなのかは、作る側の企業のほうはプロとしてだいたいはわかるだろう。

大事なのはその後である。異物が入った商品を買ってしまった顧客側は、きちんと対処してくれるものと考えている。あるいは納得のいく説明をしてくれると思っている。なのに、すぐに対処してくれなかったり、「本来そんなことはありえないが」という前提で逆に買った側を疑うかのような話の流れになってしまったら、当然ながら顧客を怒らせてしまう。いまどきはすぐにネットにそれが情報として上がり、ひどい会社だという風評が拡散してしまう。顧客側にたった判断で、迅速に誠実に対処できれば、多くの個別案件は解決できるはずだ。しかし「うちの会社のこの商品でそんなことが起きるはずがない」という前提に立ってしまうと、プロとしての経験が対処のための冷静な判断を誤らせてしまうのである。

食品ではないが、2014年末からちょっと関心を持った事案がある。

家具量販大手の店で椅子を買った客が、椅子が壊れて転落して親指をケガしたとして、4,200万円の損害賠償訴訟を提起した。関心をもったのは、一つは転落して親指をケガしたことでなぜ4千万円以上もの損害賠償を求める訴訟にまで発展してしまったかという点だ。現実にケガをした側と、ウチの商品でそんなことが起きるわけがないとする企業側のやりとりがあったはずだ。企業側はさまざまな実験やデータを揃えた上で判断したのだろう。それが決裂したので訴訟になったと容易に想像できる(報道されている情報しかないので、あくまでも想像だが)。企業のほうは「裁判で主張を明らかにしたい」としている。データには自信を持っている様子だ。法廷でどういう決着がつくかはわからないが、裁判を受けて立ってまで客を相手に自社の正当性を主張しようという姿勢が正しいかどうか。

もう一つの注目点は、この1月になってテレビの情報番組がこの事案を取り上げたが、放送内容はほとんど顧客側の主張で構成されていた点だ。企業側は「裁判で主張を明らかにしたい」としかコメントしておらず、取材にも対応していないため仕方がないといえばそれまでだが、いったん訴訟が提起されたら法廷で決着がつくまで第三者は論評できないところだ。ところが、顧客側が積極的にテレビで自分の主張を展開し、テレビ局も同じ椅子を買った他の客でも事故が起きていると紹介しているのだ。番組を見た視聴者がどういう印象を持つかは言わずもがなである。企業側は、この点でも大いに損をしたと言っていいのではないだろうか。

 カップ麺にゴキブリが入っていたという指摘に「通常このような混入は考えられない」とした判断。裁判でどこまでも自社の主張を貫こうとする判断。

どういう展開になるかを冷静に見極めて、企業人として健全な判断をしたいものである。