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企業魅力度モデルの構築―魅力的な企業の評価と伝わり方を考える

『日経広告研究所報』10月1日号より

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CSI Topics

『日経広告研究所報』(2016年10月1日発行)に企業広報戦略研究所の北見上席研究員と長濱主任研究員の寄稿記事が掲載されました。

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1.はじめに
2.企業魅力度モデルの考え方
3.企業の魅力度調査
4.まとめ
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1.はじめに

近年、スマートフォンの普及とソーシャルメディアの発達により、生活者をはじめとした企業のステークホルダーが、企業に対する情報を発信できるようになった。それに伴い、企業のイメージ形成において、生活者がソーシャルメディアなどで発信する情報の役割への関心が高まっている。

かつて、ネット上の口コミの主体は限られた人々であった。さまざまな領域に関心を持ち、情報発信を行う「市場の達人」と呼ばれる人々が中心になって、ネット上の口コミが拡散していった。しかし、ソーシャルメディアの普及は、この状況に大きな変化を及ぼした。06年にはインターネットユーザーで、ネット上で情報発信を行っている人は17.1%にしか過ぎなかった。しかし、10年にはその割合は、45.3%にまで上昇している(清水、2013)。もはや、少数だけではなく、多数の生活者がソーシャルメディア上の情報発信を実践している時代となったのである。

生活者が発信する情報には、企業のふるまいを評価する情報も多く含まれるようになってきている。生活者はマスメディアの報道で流れた企業情報、広告やCM、店舗で出会った従業員のふるまい、商品・サービスそのものなど、さまざまな企業に関する情報を評価して、寸評を加えている。それらの寸評は、良くも悪くも生活者が興味を抱いた企業のふるまいに対する評価なのである。まったく関心がない企業は、情報発信を行う対象にすらならない時代(※1)である。このような時代背景を考慮に入れれば、生活者が関心を払うような魅力的な企業であることが、企業の競争優位を勝ち取る上でも重要と言える。

本論では、企業の魅力度を評価するモデルを開発し、生活者1万人を対象とした調査をもとに、生活者が魅力を感じる企業の要素とその情報経路について検討を行う。

2.企業魅力度モデルの考え方

(1)企業の魅力とは

企業の魅力を考える際の「魅力」とは何であろうか。辞書によれば「魅力」とは、「人の心をひきつけて夢中にさせる力」(※2)「人の心をこころよく引きつける力」(※3)ということになる。「魅力」というからには「引きつける」ことが必要不可欠になる。企業においても、ヒト、モノ、カネ、情報を引きつけ、強い企業となるために、「魅力」は重要な要素と言えるだろう。

企業の魅力に関する先行研究としては、中村ほか(1986)、関口・大里(2010)などがあるが、いずれも経営労務問題をテーマにして、優秀な人材を引きつける企業としての魅力(「給与」「知名度」「仕事の魅力」など)について論じている。また、Hannon&Sano(1994)でも‶Corporate Attractiveness”(企業の魅力)をテーマに議論がされているが、求職者である学生を対象とした就職先としての魅力の研究が中心である。「評判」「伝統」は企業の魅力には大きな影響を与えず、「売上高」「企業規模」「利益」「成功要因」などの混合されたものが影響を与えていると示唆されている。

このように、企業の魅力に関する従来の研究では、求職者を引き付ける企業の魅力要因は何かという文脈で研究がなされており、いずれも企業のイメージ要因だけではなく、「給与」「知名度」「売上高」「企業規模」「利益」といったファクトに基づく情報も有用であることを示唆している。

企業における「魅力」は、「人の心を引きつける」ものであり、また、その「人の心を引きつける」ものは、実際に企業が行っているファクトをベースにしたものでなければならない。企業は組織であり、企業そのものは具体的には目に見えるものではない。実際に、我々が企業として見ているものは、企業が行っている事業活動としての「商品やサービス」、企業として成立するための必須要素の尺度とも言える「売上高」「利益」「資本」「従業員数」など企業体に関する「会社的な情報」、そして、経営者・役員・従業員などその企業に属している「ヒト」を中心とした「人的な情報」である。

企業は「ヒト」の集合体である。経営者という「ヒト」が、従業員である「ヒト」を雇用して組織し、働く人々およびさまざまなステークホルダーと緊密な関係を構築しながら、組織の共通の目的のために活動を行っている集団が企業である。我々は一般的に、報道や広告などメディアに登場する経営者、あるいは、店頭で接したり家庭を訪問してきたりした従業員などを評価して、企業の魅力の一部として認識していることが多い。

(2)企業魅力度モデル

スライド5

図表1 企業魅力度モデル概念図 出所)企業広報戦略研究所

企業の魅力を評価するモデル(企業魅力度モデル)として、「人的魅力」「会社的魅力」「商品的魅力」の3つの魅力からなるモデルを開発した(図表1)。3つの魅力は、それぞれ6領域とそれに対応する計12の詳細項目から構成されている。

「人的魅力」は、「企業を構成する『個人』や事業活動を通じて周囲に感じさせる『法人』としての魅力」のことである。「人的魅力」の領域としては「リーダーシップ(経営者の魅力、成長戦略提示、業界牽引力)」「誠実さ・信用」「職人のこだわり(品質、イノベーション)」「職場風土(人事制度・社風・職場環境)」「ソーシャルイシュー対応力(CSR・環境・CSVなど)」「アイデンティティ(法人としてのビジョン・理念・文化)」の6つの領域があり、合計12の詳細項目で成り立っている。

具体的には、「信頼できるリーダー・経営者がいる」「チャレンジスピリットにあふれたリーダー・経営者がいる」「ビジョンを掲げ、業界を牽引している」「イノベーションにこだわる経営をしている」「こだわりをもった社員が品質向上にチャレンジしている」「実力主義な職場風土である」「自由な議論ができる風通しの良い社風である」「社員がやりがいを持って活き活きと仕事をしている」「まじめで、信頼できる社員がいる」などの12項目である。

次の「会社的魅力」は、「優れた財務パフォーマンスとそれらを支える仕組みや取り組みに関する魅力」と定義した。構成領域としては、「成長戦略」「安定性/(中・長期的な)収益性」「リスク・ガバナンス対応」「投資・財務戦略」「市場対話/適時開示力(決算情報・重要事項)」「社会共生(文化・地域)」の6領域であり、合わせて12の詳細項目がある。

具体的には、「優れた成長戦略がある」「経営方針をわかりやすく説明している」「安定的な収益基盤がある」「長期的な成長が見込める」「リスクへの備えがしっかりしている」「健全で開かれた経営をしている」「起業家・ベンチャー企業に積極的な支援をしている」「M&Aなど、積極的な投資で事業拡大をしている」「問題があっても迅速に公表する姿勢がある」「地域に密着し発展に貢献している」などの12項目となる。最後の「商品的魅力」は、「商品・サービスを通じて伝わる魅力」である。この魅力に含まれる領域は「ソリューション(課題解決)力」「コストパフォーマンス」「リコメンド・時流性(売れている感、話題性など)」「共感(世界観、コミュニティなど)」「安全性、アフターサービス力、クレーム対応」「独創性・革新性」の6つの領域である。そして、それぞれの領域に対応する詳細項目を設定している。

具体的には、「優れた機能・効果を持つ商品・サービスを提供している」「商品・サービスを安価に提供している」「付加価値の高い商品・サービスを提供している」「メディアや口コミで話題の商品・サービスを提供している」「多くの人の購入している商品・サービスを提供している」「ネット上で評価の高い商品・サービスの提供している」「開発ストーリーに共感できる商品・サービスを提供している」「アフターサービスや問い合わせ対応がしっかりしている」「品質に信頼がおける商品・サービスを提供している」などの12項目である。

3.企業の魅力度調査

(1)調査概要

生活者が感じる企業の魅力を測定するために調査を実施した。調査サンプルは20〜69歳の全国の男女、合計1万人である。調査実施期間は16年3月23日から29日まで。調査方法はインターネット調査法であった。

調査に際しては、我々が設定した10業種(※4)を提示し、その中から魅力的な業種を選択してもらった。その上で、選択業種について売上規模上位5社とその業種で代表的な企業(外資系含む)の合わせて15社ずつ、社名(※5)を提示して調査(※6)を行った。調査対象とした10業種は、「不動産・建設」「エネルギー」「サービス・その他」「金融」「情報・通信」「電気機器」「鉄道・航空・運輸」「自動車」「医薬品・生活用品」「食品」である。選択された業種に対して、提示した15企業の中から回答者に魅力を感じる企業を選んでもらい、さらにその要因として、企業魅力度モデルの36の詳細項目から魅力を感じたものを選択してもらった。

なお、企業の魅力を把握するだけでなく、その魅力がどのような情報経路を通じて伝わっているかを知ることは、企業のマーケティングにとって重要である。そのため、本調査では、生活者が企業の魅力を感じた情報の経路に関しても調査を行っている。

(2)企業の魅力(業種別)

企業の魅力として、具体的にどのようなポイントを生活者が評価しているのか、さらに業種によって違いはあるのか、調査結果をもとに分析を行った。

図表2は、生活者が魅力を感じる企業活動について、複数回答で選んでもらった結果を、「人的魅力」「会社的魅力」「商品的魅力」のカテゴリーごとに上位から並べたものである。

「人的魅力」のカテゴリーの中で生活者が最も魅力を感じている企業活動は「ビジョンを掲げ、業界を牽引している」(21.1%)であり、続いて「信頼できるリーダー・経営者がいる」(18.8%)、「社会の発展や、社会課題の解決に貢献している」(18.0%)となっていた。職場の風土よりも、経営者や企業のリーダーシップに対して、生活者が企業としてより強い魅力を感じていることがわかる。

なお、業種別に見ると、「情報・通信」「不動産・建設」「金融」「自動車」は、「人的魅力」の中でも「信頼できるリーダー・経営者がいる」が魅力を感じる要素として1位となっている(24.7%、23.2%、21.3%、21.1%)。また、「鉄道・航空・運輸」は、「社会の発展や、社会課題の解決に貢献している」(21.6%)が1位である。このことから、業界を牽引する経営トップにニュースなどで接することの多い業界などでは、経営者のリーダーシップが企業の「人的魅力」の中で比較的大きい割合を占めていることがうかがえる。また、社会インフラとしての役割を果たしている「鉄道・航空・運輸」業界については、その社会性が企業の魅力の中で重要な位置を占めているものと考えられる。次に、「会社的魅力」の結果を見ていきたい。回答者全体の傾向としては、「安定的な収益基盤がある」(24.9%)、「長期的な成長が見込める」(17.2%)、「優れた成長戦略がある」(13.2%)が、会社的魅力の中で、魅力を感じさせる要素のトップ3となっている。しかし、「自動車」については「長期的な成長が見込める」が「安定的な収益基盤がある」と同率1位(ともに17.0%)である。持続的な成長が求められる産業として自動車産業が認識されており、その要素が会社の魅力の中で重要な役割を果たしていることがうかがえる結果となった。

「商品的魅力」については、魅力を感じさせる要素として、回答者全体の傾向で「優れた機能・効果を持つ商品・サービスを提供している」(21.1%)、「品質に信頼がおける商品・サービスを提供している」(20.8%)、「多くの人の購入している商品・サービスを提供している」(19.2%)の順番となっている。

しかし、「エネルギー」「不動産・建設」「鉄道・航空・運輸」「金融」については「品質に信頼がおける商品・サービスを提供している」(各19.4%、19.0%、18.6%、15.3%)が1位となった。生活のインフラとしての役割を果たしているこれらの企業については、単に商品・サービスの機能・効果だけでなく、魅力の源泉として「品質への信頼」といった点がより重要視されていることがわかる。

また、「食品」については「多くの人の購入している商品・サービスを提供している」(30.1%)がトップとなっており、身近に商品と接する機会が多い同業界については、多くの人が購入する商品を提供しているかという点が重視されていた。

一方、「サービス・その他」の業種については「オリジナリティ・独創性がある商品・サービスを提供している」(20.4%)が1位であり、サービス業においては独創性が生活者の重要な評価ポイントとなっている。

図表2

 

(3)魅力の伝わる情報経路

次に、生活者はどのような情報を経由して、企業の魅力を感じているのだろうか。今回の調査では、回答者が最も魅力があると感じた企業について、どのようなところで見聞きしたことかを複数回答で選択してもらった。

全業種について、この回答結果を合算した結果を見ると、企業に魅力を感じる情報源として最も大きな割合を占めていたのは、「番組や記事」(41.6%)であった。以下、メディアを経由した情報経路を見てみると、「企業が直接発信する情報」(27.6%)、「ウェブを通じた口コミ」(18.9%)、「広告(チラシ、CM含む)」(17.0%)であった。「番組や記事」など報道が高い数値を示しているが、オウンドメディアやソーシャルメディア、そして広告も企業の主要な魅力を伝える情報経路の一部として有用である。

一方で、非メディア経由を見てみると、「商品・サービスを直接体験して」(37.4%)、「社員・店員などを通して」(15.1%)の割合が高い。メディア経由だけではなく、非メディアの世界で、商品・サービスそのものや社員・店員に接する体験機会も、企業の魅力を感じる上で重要な役割を果たしていることが明らかとなった。

また、「ウェブを通じた口コミ」(18.9%)、「身近な人から(家族・友人・知人など)」(14.3%)も一定の割合を占めており、ネットとリアルな世界の両方を通じて、生活者の口コミが企業の魅力の知覚に影響を及ぼしていることがわかる。

 

(4)魅力が伝わるメディア経由の情報経路(年代別)

近年の情報環境の変化によって、生活者の接触する情報源に年代層による大きな変化が生じている。この点を踏まえて、メディアに関する情報伝達経路を選択した回答者に対して、さらに具体的に、どのような情報経路で企業の魅力について見聞きしたかを尋ね、年代別にも分析を行った(図表3)。

全年代の合計値を見ると、ほかの選択肢を引き離して首位になったのは「テレビ番組」(46.5%)であった。「新聞記事」(24.0%)、「ウェブ上のニュース」(19.4%)、「テレビCM」(18.1%)、「雑誌記事」(15.5%)、「新聞広告」(6.7%)など、メディアを通じて知覚する企業活動が、生活者に企業の魅力を伝える上で重要な役割を果たしていることがわかる。

一方、「ウェブ上のレビュー」の回答率を見る限りでは、60代の回答率6.1%に対して20代の回答率は12.0%となっている。「家族・友人・知人のソーシャルメディア」についても、60代の回答率3.1%に対して20代は6.3%であった。

メディアに限定してみた場合には、テレビや新聞などの報道と広告を通じて企業の魅力が伝達される割合が高いものの、若年層では徐々にSNSの重要性が高まりつつある段階にあると言えるだろう。

図表3

(5)企業の魅力を伝える情報経路

さらに、企業の魅力によって、情報経路ごとに伝わりやすさに違いがあるか分析を行った。分析方法としては、企業の魅力ごとに、その魅力を見聞きした情報経路(メディア経由)の回答数(複数回答)を足し上げた。その集計結果をもとに、企業の魅力×情報経路(メディア経由)のクロス集計表を作り、カイ二乗検定および残差分析を行った(※7)。カイ二乗検定の結果、危険率1%水準で有意な結果となり、企業の魅力と情報経路の組み合わせによっては、企業の魅力の伝わり方が異なることが明らかになった。さらに残差分析の結果では、企業の魅力と情報経路の組み合わせの中に、正負両方で有意な組み合わせが認められた(図表4)。

この結果から、企業の魅力内容に応じて、伝わりやすい情報経路をうまく活用できる可能性があることがわかる。その具体的な例として、次のような組み合わせが考えられる。例えば、「信頼できるリーダー・経営者がいる」「チャレンジスピリットにあふれたリーダー・経営者がいる」「ビジョンを掲げ、業界を牽引している」などのリーダーシップに関する魅力については、ほかの情報経路よりも「テレビ番組」「新聞記事」経由でより多く伝わっている。

一方、「環境にやさしい経営をしている」については、テレビCMが正に有意な結果となり、情報伝達経路として機能していることがうかがえる。

また、「優れた機能・効果を持つ商品・サービスを提供している」「メディアや口コミで話題の商品・サービスを提供している」「多くの人の購入している商品・サービスを提供している」「品質に信頼がおける商品・サービスを提供している」などの商品・サービスの魅力に関する情報経路としては、テレビCM経由での回答がほかの情報源よりも高い割合となっている。

さらに、「起業家・ベンチャー企業に積極的な支援をしている」「投資家などとのコミュニケーションを大事にしている」の情報経路としては、「企業のソーシャルメディア(Twitter、Facebook、ブログなど)」が有意となり、企業のソーシャルメディアが投資家向けの情報経路として活用されていることがうかがえる結果となった。

図表4

 

4.まとめ

「人的魅力」を構成している要素としては、全体傾向として「ビジョンを掲げ、業界を牽引している」がトップだったのに対して、「情報・通信」「不動産・建設」「金融」「自動車」では「信頼できるリーダー・経営者がいる」が、「鉄道・航空・運輸」業界については「社会の発展や、社会課題の解決に貢献している」の割合が最も高かった。

また「会社的魅力」についても、全体の回答者では「安定的な収益基盤がある」の回答の割合が最も高かった一方、「自動車」業界では「長期的な成長が見込める」が同率でトップとなった。

「商品的魅力」についても、回答者全体の傾向では「優れた機能・効果を持つ商品・サービスを提供している」が1位であった。しかし、「エネルギー」「不動産・建設」「鉄道・航空・運輸」「金融」の各業界では、「品質に信頼がおける商品・サービスを提供している」が1位となった。また、「食品」業界については「多くの人の購入している商品・サービスを提供している」が、「サービス・その他」業界については「オリジナリティ・独創性がある商品・サービスを提供している」がトップとなった。

このように、生活者が魅力を感じる企業行動は業種によって異なる結果となった。企業が自社の魅力を発信する際には、各業界における事業の公共性や成長性、商品・サービスの特性に応じて、情報発信するコンテンツを選択する必要があることがわかる。

さらに、企業の魅力に関する情報経路について、「番組や記事」「企業が直接発信する情報」「広告(チラシ、CM含む)」などのメディアが高い割合を占めている一方で、「商品・サービスを直接体験して」「社員・店員などを通して」などの割合が高いことも明らかになった。メディアだけではなく、実世界での社員・店員のふるまいなどの非メディア経由でも、企業の魅力は伝わっているのである。

メディア経由での企業の魅力の伝わり方は、ニュースや広告が中心的な役割を果たしつつも、多面的に生活者に伝達されていた。

企業の魅力ごとに情報経路との関係を見てみると、企業のリーダーシップに関する魅力は、テレビ番組や新聞記事などを中心に伝達されていた。一方、商品・サービスに関する魅力は、CMなどの広告を中心に伝達されていた。企業の魅力要素を生活者に伝える場合、発信を行うメディアと形式(報道・広告)を使い分ける必要性が示唆された。

情報経路に関する分析結果を年代層別に見た場合、若年層になればなるほど「番組や記事」「企業が直接発信する情報」「広告(チラシ、CM含む)」「商品・サービスを直接体験して」の割合が下がり、「ウェブを通じた口コミ」の比重が増加していた。情報環境の変化により、若年層を中心に、今後インターネット上の口コミの影響力が拡大する可能性が予想される結果となった。

本調査結果に基づけば、各業界の特性に応じて情報発信のコンテンツにふさわしい企業活動の内容を選択する必要がある。そして、現状は既存のメディアを情報発信の主軸に据えつつ、発信するコンテンツの内容に適したメディアを選択することが望ましい。一方、今後は若年層の情報接触の変化に応じて、SNS上での情報発信の充実の検討も求められるだろう。

なお、今後の課題としては、企業の魅力を測定する項目の検討の必要性が考えられる。それぞれの魅力の内訳と分類についてさらに精緻化することが望ましい。

また、企業の魅力と情報経路の分析結果についても、あくまで現状の関係を見ているに過ぎない点について留意する必要がある。現在、ある魅力について多く伝達している情報経路であっても、必ずしも最適なものであるとは限らないし、今後も多く用いられるとは限らないからである。今後はこのような点にも留意しながら、さらに企業の魅力とその伝わり方について、研究を深めていきたい。

<注>

※1 総務省(2011)「情報流通インデックス調査」よれば、世の中に流通している情報の99.996%は、消費されず受け流されている。

※2 『デジタル大辞泉』。

※3 『大辞林』第三版。

※4 生活者対象の調査のため、生活者が接点を持ちやすい10業種に絞った。

※5 不動産・建設(三井不動産、三菱地所、住友不動産ほか)、エネルギー(東京電力、関西電力、東京ガスほか)、サービス・その他(日本郵政、リクルート、セコムほか)、金融(三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、第一生命保険ほか)、情報・通信(NTT、ソフトバンクグループ、KDDIほか)、電気機器(日立製作所、ソニー、パナソニックほか)、鉄道・航空・運輸(JR東日本、日本通運、JR東海ほか)、自動車(トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車ほか)、医薬品・生活用品(武田薬品工業、富士フイルム、花王ほか)、食品(サントリー、明治、味の素ほか)である。詳しくは、http://www.dentsu-pr.co.jp/csi/csi-outline/20160609-2.htmlを参照。

※6 調査対象企業は各業種について15社で計150社。有効回収サンプル数は、各業種1000サンプルなので、合わせて計1万サンプルである。

※7 企業の魅力36項目と「当てはまるものはない」を合わせた37の選択肢と、メディア経由の22の情報経路と「その他」を合わせた23項目の選択肢について、37×23のクロス集計表を作成し、カイ二乗検定と残差分析を行った。

<参考文献>

・清水聰(2013)『日本発のマーケティング』千倉書房、30ページ。

・関口倫紀、大里大助(2010)「企業魅力形成プロセスの非線型・非補償型メカニズムの検証―散布モデル(scatter model)の適用」『経営行動科学学会年次大会:発表論文集』258-263ページ。

・総務省(2011)「情報流通インデックス調査」『情報通信白書』。

・中村雅彦、若林満、佐野守(1986)「企業魅力のクラスター分析―就職先としての地元企業の魅力」『経営行動科学』第1巻第1号、1-9ページ。

・John Hannon, Yoko Sano(1994), The Determinants of Corporate Attractiveness, Purdue CIBER Working Papers.

筆者

北見北見幸一(きたみ こういち)

電通パブリックリレーションズ コーポレートコミュニケーション戦略部長兼企業広報戦略研究所上席研究員。
立教大学大学院経済学研究科経営学専攻博士後期課程修了。博士(経営学)。
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授を経て2012年現職。

 

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長濱 憲(ながはま けん)

電通パブリックリレーションズ コーポレートコミュニケーション戦略部シニア・コンサルタント兼
企業広報戦略研究所主任研究員。1998年学習院大学経済学部卒業。同年電通パブリックリレーションズ入社。
2013年から東京大学大学院学際情報学府に在学。