企業広報戦略研究所 C.S.I Corporate communication Strategic studies Institute

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調査から見る日本企業の広報力2016 Vol.2 情報収集力

『経済広報』2016年10月号より

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『経済広報』(2016年10月号)に企業広報戦略研究所の末次上席研究員の寄稿記事が掲載されました。

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広報における“情報収集力”とは

連載企画の2回目は、「情報収集力」についてお話ししたい。「情報収集力」というのは、いわば“アンテナの感度”であり、知りたい情報を集められる力といえる。感度が高いほど、情報分析の正確性が増すことになる。分析の段階において、自社の立ち位置・戦況が詳細に分かれば、より高い戦略性を持った展開が可能になる。広報とは情報のキャッチボールであり、一方的な情報発信ではないという本質に立ち返れば、情報の受け手が何を考え、何に期待しているのかを知ることは、発信力を高める上で必要不可欠なことである。では、どのようにすれば、“情報収集力”は高まるのだろうか。
図2
今回調査の回答企業のうち、東証一部354社の中でも広報力の高いSランク企業89社の情報収集力の項目(実施率)を比較してみた(図参照)。確かにSランク企業の「記事モニタリング」や「競合企業動向チェック」などの実施率は高い。しかし、それは全体にもいえることであり、大きく差が表れているのは、「メディアの最新動向を把握している」(差分:43.1ポイント)、「記者の考え方や意見を、独自人脈・ルートで把握している」(差分:40.6ポイント)、「生活者・顧客の意識・実態や、自社への評価を定期的に収集している」(差分:35.6ポイント)、「ソーシャルメディアやWeb上で自社に関するモニタリングを継続的に実施している」(差分:34.9ポイント)などの項目であった。

情報収集力を高めるために

「メディアの最新動向」や「記者の考え方や意見」を情報収集する方法として、「メディアヒアリング」が挙げられる。記者などに直接会って執筆の考え方や、現在の興味、企業に対する期待をヒアリングする方法である。これによって、企業情報の直接の受け手である記者が、“どのような情報を求めているのか”が分かる。まさに情報のキャッチボールが成立することになる。こうした情報収集ができる人間関係を築くことも、広報の大事なミッションである。

「ソーシャルメディアのモニタリング」や「生活者・顧客の意識・実態」を情報収集する方法としては、「ソーシャルリスニング」が挙げられる。ツイッターなどの膨大な情報から、自社やサービスに関わる評判を洗い出していく。プロである記者が書く洗練された記事と違い、生活者が、瞬間的に感じた思いをストレートに端的に表現しているため、メッセージや広報戦略を考える上で、気づきを得ることが多い。危機の予兆をつかむのにも極めて有効だ。ソーシャルメディアなどの普及やツールの進化によって、情報収集が簡便になった半面、情報量は飛躍的に多くなっている。広報責任者は、本当に必要な情報収集ができているか、情報を集めることで満足していないかなどを再点検し、前述のような情報収集の方法を検討してみてはいかがだろうか。
孫子の兵法で有名な一文に「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」という言葉がある。競合企業との広報という情報戦の前には、知るべきことを知る努力が必要と考える。

筆者

 

末次 祥行(すえつぐ よしゆき)

株式会社電通パブリックリレーションズ コーポレートコミュニケーション戦略室 調査部長/企業広報戦略研究所 上席研究員
広告代理店からプランニング会社を経て、2007年電通パブリックリレーションズ入社。飲料、電機、通信、IT企業、大学等のマーケティングコミュニケーションやコーポレートコミュニケーションを手掛ける。現在、コーポレートコミュニケーション戦略部に在籍。調査を活用したPR、メディアヒアリング、レピュテーション分析、広報効果測定、報道論調分析や企業リスク/ソーシャルリスクなど、コーポレートの広報戦略やイシュー・リスクに関連したコンサルティングを主に担当。