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臨海部を世界最先端の「ライフサイエンス」「環境」の発信地へ

クライアント 川崎市
業種 官公庁・その他団体
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ミッション 川崎市臨海部エリアは、日本最大の工業エリア、「京浜工業地帯」の中枢を成し、日本の産業の発展を支えてきた。昭和に入り、戦後の高度経済成長期を牽引するも、高度経済成長期の終焉とオイルショックを機に徐々に事業所数は減少していった。また企業の海外進出など、産業構造の変化による使用スペースの縮小、工場の統合・移転などで、臨海部では遊休地ができるようになっていった。そんな中、川崎市川崎区殿町3丁目地区において約40ヘクタールの土地が空くこととなり、2001年に同地を独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)などが取得した。その後、川崎市は「殿町3丁目地区整備方針」を策定し、再開発に向けた取り組みが本格的にスタート。川崎市は、税収の多くを占める川崎臨海部の産業構造の変化を企業ヒアリングなどで調査した。臨海部立地企業が少子高齢化などを背景にこれまで培ってきたモノづくり技術を活かし、ライフサイエンスや環境分野でのビジネスモデル確立に向けてシフトし始めている状況をつかんだ。こうした中、2010年10月の羽田空港再国際化決定を背景として、羽田空港の多摩川対岸に位置する殿町3丁目地区に、世界中の研究者やビジネス関係者が集まり周辺企業とも連携できる新しい研究開発産業拠点を形成することによって、少子高齢化や地球温暖化など世界が直面している課題の解決に貢献するとともに、川崎市のみならず日本経済全体の成長牽引を目指すこととした。

実施内容

川崎市殿町3丁目地区にあるこの再開発エリアは、2011年3月に、「キングスカイフロント=KING SKYFRONT (Kawasaki INnovation Gateway at SKYFRONT)」と名付けられた「KING」は、「Kawasaki Innovation Gateway」の頭文字と「殿町」の地名に由来したもので、日本の成長を牽引し、世界の持続的な発展に貢献する拠点であるという意味が込められている。そして「Sky Front」は羽田空港に面していることを表している。

 

【第1ステップ】2011年4月~2013年3月にかけ、われわれはまず、ターゲットである進出検討企業の経営者に向け、川崎市の事業計画に関する情報を発信していくことにした。そのため、彼らが普段目にする経済紙、ビジネス誌などを中心としたメディアへの情報提供を行い、記事の掲載を図った。川崎記者クラブなどの記者を集めたプレスツアーも実施。

 

【第2ステップ】

2013年からの第2ステップでは、進出対象企業などがニュースメディアを介さず、直接触れることができるコンテンツの開発と発信を行った。さらには、すでに進出した企業・関係機関がどのような事業展開を行っているのか、どのような人がどのようなことを行っているのかの理解促進を図るため、各種ツールを用意した。また、川崎市は、「公害の街」などネガティブなイメージを持たれやすいが、川崎が持っているフロンティアスピリットや、モノづくりの高い技術などポジティブなイメージと、このエリアに来ることで得られるベネフィット(利益)を打ち出していった。高度な研究機関や研究者を集めるためのキーポイントは、その場所に今後高度な研究機関や研究者が本当に集まるということを見せていくことである。そのために、すでに進出した企業・機関のトップレベルの研究者や企業の経営者が登場する映像や、ニュースレターを製作し、臨海部に進出したことによって受けられるベネフィットなどを語ってもらい、ターゲット企業に発信していった。こうしたコンテンツは、英文のニュースレターやウェブサイトで、海外にも積極的に発信していった。また、この地の最大の魅力として、日本国内および世界各地を結ぶ羽田空港が近いことが挙げられる。この羽田空港に近いという事実は、特に海外企業に大きなベネフィットになる。こういったベネフィットを伝えるプロモーション動画は日本語、英語、韓国語、中国語繁体字、同簡体字で多言語展開とした。海外からの進出企業獲得や、同エリアの躍動感を表す90秒の短編動画においては、分かりやすい「日本的」な動画に仕上げた。海外の企業向けのコンテンツであるが、川崎駅の大型ビジョンでも放映し、これを見た通行人が「川崎がなんか格好いい動画を作った」とツイッターで発言をするなど、地元でも好評であった。

 

【第3ステップ】

2014年4月からの第3ステップでは、PRのターゲットに川崎市民も加え、コミュニティーリレーションズ(対住民コミュニケーション活動)を展開しながらプロジェクトについての理解を深める活動を行った。2014年調査では、15%に満たない市民しか「キングスカイフロント」を知らないことがわかった。市民向けのパネル展や広告展開を行い、「キングスカイフロント」ではいったい何が行われているのかを知るきっかけをつくり、市民へのアプローチを強化。2015年1月から3月には、JR南武線・鶴見線の車内に窓上広告を掲出。黒地に黄色い文字を中心とした、大胆なタイポグラフィーを中心とするデザインで、川崎市民に「キングスカイフロント」の名称・場所・取り組み内容について訴えていった。「川崎の南端は、世界の最先端です。」と書かれたコピーは非常にインパクトがあったのではないか。また、2014年3月以降、同エリアでの取り組みを「ぱっと見て分かる」パネルを作製し、どのようなことが行われているのかを市民に伝えていく活動を継続している。

戦略ポイント

企業誘致の場合、BtoBの活動のため、ターゲットは絞られる。広く多くの人に情報を伝える活動は、コスト上無駄だと思われるかもしれない。しかし、進出企業関係者は、さまざまな側面から検討する。また、直接ターゲットとなる人は、彼らの周囲の人々の影響を受けることも多いため、広く多くの人が見ることができるコンテンツ開発を行い、PR活動にはBtoCの側面も盛り込んだ。

成果

J&J(川崎)当初の目的であった、「キングスカイフロント」への研究機関・企業誘致については、約40ヘクタールのエリアの約9割が埋まり、有力企業、研究機関の進出
もあり、一定の成果を出すことができた。ジョンソン・エンド・ジョンソンは、2014年の8月に医療従事者向けのトレーニング施設「東京サイエンスセンター」(写真左)をオープンしたわけであるが、同センターには、患者負担の少ない低侵襲の外科手術シミュレーション装置、心臓・血管系疾患治療・筋骨格系治療トレーニングのシミュレーター、遠隔映像カンファレンス(会議)システムなど先進的な医療設備を配し、2015年7月末までに医師や看護師を含む約2万2000人が来場したとしている。それらの医療従事者も、国内だけではなく、アジアを中心とした海外からも来ている。最先端のグローバル企業の誘致によって、川崎市が世界の先端医療のトレーニング拠点となったのである。こういった情報は、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどの進出企業からも情報発信されている。そして、これらの進出企業の発信した情報はメディアなどでも紹介され、さらなる情報拡散へとつながった。また、川崎市民における「キングスカイフロント」の認知は、2014年2月調査においては、14・8%であったが、2015年2月の調査では20・4%に向上した。さらに、川崎臨海部における活動については、いわゆる「産業夜景」と「ライフサイエンス分野の研究」が同数認知となり、「川崎市の臨海部で、ライフサイエンスについての研究が行われている」との認知が高まってきた。

プロジェクトメンバー

  • 東川 藍

    ディレクター
    東川 藍

  • 花上 憲司

    プロデューサー
    花上 憲司