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中国 Report 12 対談:大連、広州での日本企業向けセミナーをふりかえって

― 中国に対する理解なくしては、コミュニケーションの成功なし ―

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2月3日に大連、3月11日に広州で行われた日本貿易振興機構(ジェトロ)の日本企業向けセミナーで講師を務めた中国市場戦略研究所の徐向東代表取締役と当社中国PRシニアコンサルタントの鄭燕(日本PR協会認定PRプランナー)が、大連と広州のセミナーをふりかえって、中国で成功するコミュニケーションについて対談を行いました。

大連と広州の違い

鄭: 大連、広州セミナー、お疲れさまでした。エリアによってそれぞれ異なる反応でしたが、皆さんが興味をもって真剣に耳を傾けてくださったようでよかったですね。ところで、徐さんからみて、大連と広州の違いについてどう思いますか?

徐氏: まず、都市の気質という面からみると、大連は対日の生産・輸出拠点として発展を遂げてきたのに対し、広州は昔から香港の影響が大きく、欧米との貿易が盛んで商業的な雰囲気も強くなっています。そして、人の違いという意味では、全部そうとはいえないですが、大連人はよりメンツを重視し、広州人はより実利を重視するきらいがあります。例えば、広州のGDPは全国平均よりも高く、収入も高いのですが、実務的であまり外見に気を配らない人が多いですね。一方、大連人はお金がなくても、ブランド品を好んで買ったり、冬に大連の街角で高価な毛皮のコートを着る人を時々見かけたりするのは典型的な例です。

鄭: 飛行機を降りてから、さっそく現地のタクシードライバーや店員さんから情報収集をしたりして、徐さんは本当によく市場を観察されていますね。リアルな情報収集のために工夫していることはなんでしょうか?

徐氏: やはり現場まで足を運んで、自分の目で確かめ、生の声を聞くことを大切にしています。例えば、私が話をしたドライバーは、広州人は「春晩」という中国旧暦の大晦日の夜に放送される紅白に似た中国中央電視台(China Central Television:CCTV)の年越し番組をあまり見ないと言いました。昔は香港のドラマがはやっていた時期もありましたが、いまは広東語の地元の番組のほうが面白いと言います。一方、大連はやはり北京に近いせいか、CCTVを見る率も比較的高いです。やはり現場で聞いて見たことは一番リアルで面白いです。

鄭: 大連と広州のセミナーに参加された企業も全然違っていましたよね。大連の参加企業の多くは日本向け輸出の生産加工・貿易拠点で、これから中国内陸の開拓を考え始めている企業が多いのに対し、広州の参加企業はすでに中国内陸向けに業務を行い、または成功している企業もありました。ただし、ブランドイメージの確立などをなんとなく大事と思いながらも、まだ真剣に取り組んでいない企業が多かったことは共通していました。

日本企業のコミュニケーション課題

鄭: 徐さんが講演で指摘されたとおり、日系企業にとってブランドイメージの構築は大きな課題です。20年以上前から中国に進出しているのに、「顔が見えない」といわれる日系企業はたくさん存在します。一貫性のある「顔づくり」は大切です。中国市場において、どんな思想と企業理念を持って、これから中国社会と付き合っていくかに関する説明がないまま、製品中心のコミュニケーションばかりしていると、仮に成功したとしても「金を稼ぎにきただけ」と批判されかねません。

徐氏: 鄭さんの説明にもあったように、製品の情報に偏ったコミュニケーションには限界があります。バージョンアップや競合企業から新しいものが出るたびに、細かい優位性を強調する細かな説明に陥りがちで、しかも絶えず広告などの投入が必要で、膨大な投資がかかります。逆に、大事なブランドの持つストーリーや哲学をもっとターゲットに分かりやすい言葉で伝えていく部分は欠けています。中国で成功している企業の多くは、もっと大きいスケールで社会的な話題喚起ができるようなコミュニケーション展開や、消費者に対しライススタイル提案ができていますが、日本企業にそこまで踏み込むところは少ないのです。その背景には、日系企業の現地経営者にはサラリーマン社長で守りの姿勢に入る人が多いという理由も考えられます。中国は日々著しいスピードで変化しつつあり、チャレンジ精神旺盛の優秀な人材も多いのですが、日本企業で働く中国人はなかなか信用してもらえず、任せてもらえません。就職先としての魅力度からみても日系企業は欧米企業に比べて低いのです。

鄭: 企業の魅力を高めるには、公益コミュニケーション(社会貢献とそのアピール)がさまざまな面からみても有効です。社会貢献というと、すぐに寄付や植林を連想する企業は多いのですが、ちゃんと知恵を絞って考えなくてはならないものです。例えば、講演でも紹介したGEの「緑色創想」(ecomagination)のような、「エコ」と事業の両立ができるのが一番理想的です。「ecomagination」とはGEが2006年から環境保全と企業の持続的発展の両立を掲げたグローバル事業戦略の一環であり、CSR戦略でもあります。中国でも展開し、2008年に先進的な節水技術を北京オリンピックのメイン・スタジアム「鳥の巣」に取り入れるなど335件を超えるのオリンピック関連の「緑色創想」プロジェクトを行い、積極的にコミュニケーションも展開しました。この他にも、中国ローカル企業の「農夫山泉」のような水源保全ドネーション・キャンペーンなど、日系企業にとって見習うべき成功事例がたくさんあります。もっと大きいスケールで事業戦略とコミュニケーションを考えるべきです。

日系企業が中国でコミュニケーション展開する際のアドバイス

徐: 中国社会を多面的に理解しようとする姿勢がないと、中国でのコミュニケーションは成功しません。 ただし、日本人同士の集まりを大切し、従業員や現地メディアとの交流に消極的な経営者はそういった複眼的な視点を持つことは困難でしょう。中国にいながら中国社会が見えない、情報収集ができていないケースは非常に多いのです。

鄭: 徐さんがおっしゃるとおり、複眼的な視点を持つことが重要ですね。購買ターゲットの消費者だけでなく、社員や政府関連機関、メディアなど、自社にとって長期的な視点に基づく重要なステークホルダーを見極め、積極的に自ら発信し、コミュニケーションを取っていくことは各ステークホルダーとのリレーション構築に不可欠です。

3月11日広州セミナーの様子

徐氏: 一方、言葉の通じない国でいろんな不安を抱えている日本人の方の気持ちも理解できます。だからこそ、日本企業には、より日中両方のことを理解し、コミュニケーションに精通する専門家の力をもっと活用してほしいですね。 絶対に他社が真似できないものを持っている企業は別として、中国人に買ってもらうために、中国に対する理解をベースとしたコミュニケーションは必須です。それを成功させるためには、やはり現地人の優秀人材の活用は不可欠。根本的に、現地のことはやはり現地の人が一番理解していますから、現地社員が楽しく仕事できる環境づくり、金銭的なモチベーションも含む人事評価制度なども必要ですね。