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中国 Report 14 万博と観光PR

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今月、上海万博が開幕した。約160年にわたる万博の歴史において、途上国での開催はこれが初めてである。今回の万博開催を成功させるため、上海市政府は180億元(約2430億円)を投じて会場及び施設を建設、半年間の運営費として106億元(1430億円)の投入が見込まれており、周辺インフラ整備を含めた予算総額は4000億元(5兆4千億円)にも達する。こうした巨額の投資は、万国博覧会という国際的ブランド効果を借りて、中国の文化及び上海の特色を盛り込んだ上海という都市の観光ブランドを創造し、観光PRという独特の方法を運用して上海の魅力を全面的にアピールし、国際的影響力を高め、国際的観光市場を開拓し、上海を世界に名を馳せる国際観光都市にするという狙いを持っている。


アメリカの経営学者マイケル・E. ポーターは『競争戦略論』において、国内の競争優位理論を国際競争の領域に応用した、著名な「ダイヤモンド理論」を提起している。この「ダイヤモンド理論」で分析するならば、万博で上海の観光産業における国際競争力は大幅に向上すると推測できる。ある都市が大型博覧会を開催した場合に、その最も直接的な受益者は往々にしてその都市の観光業であるということが研究でも証明されている。上海万博は7000万人の入場者を見込んでいるが、その内の250万人は海外からの観光客で占め られる。これらの入場者は同時に、潜在的な消費者であり、また文化の伝達者でもある。万博が孕むビジネスチャンスには世界各国が注目しており、そのために 万博は各国の観光文化を伝える祭典ともなっている。


写真提供: 東方ネット

サービス業の一種として、観光業はサービス性、体験性、文化性という3つの大きな特徴を持つ。こうした特徴は観光業特有のものであるが、それゆえに観光商品は複雑性を持つ。観光は一種のプリセリング(事前販売)式消費であるから、人々は目的地に到着するまで自分が目にするものを予知できないし、また観光消費は他所にない「ご当地性」の特徴も持つため、観光客は実際の体験をもってのみしか観光商品の真の消費を実現し得ない。つまりこれは、人々の観光消費を促すという目的において、先ず消費者の観光地に対する感知を実現しなければならないことを意味している。現地における観光のイメージを完全に、系統的に、良好に表現し、かつそれらの情報が消費者の脳裏に有効に届いて初めて、消費者に認められ、観光の目的地として選ばれることが可能となるのである。感知の実現方法には色々あるが、中でもダイレクトで美意識の高い視聴覚体験は伝達効果が最も高い。今回の上海万博でも、数多くの出展者がこの点を意識しているのが見て取れる。今回の万博のパビリオンにおいては、IMAX巨大スクリーンから4Dホログラムまで、ハイテクを駆使した視覚展示スクリーンが各パビリオンの必需品となっているし、またどのパビリオンでも例外なく、放映内容には各国の風土人情あふれる映像や画像が選択されている。例えばインド館は、ドーム型建築の中央で360°立体ホログラム装置が織りなすインドの都市の移り変わりが放映されているし、スペイン館第2ホールでは、ランダムに交錯する大スクリーン上で、ドミンゴフラメンコを始めスペイン情緒豊かな都市の風情が展示されている。またサウジアラビア館では、世界最大のIMAXスクリーンを通じ、シルクロードで生まれた愛の物語が放映されており、美しい感情と明媚な風光を結びつけることで、観客に芸術性溢れる美の視覚記号を伝達している。


写真提供: 東方ネット

視聴覚体験を感知の方式とする効果は、もとより顕著であるが、同時に重複性が強く、伝達効果が低いという弱点も併せ持つ。故に、観光ブランドの独自化を実現するためには、文化の注入が欠かせない。旅行者にとって、観光の主な目的の一つはその土地特有の文化活動を体験することであるから、この角度から言えば、文化の展示、特に特色ある文化の展示は、観光展示で成功を得るための必勝法といえる。広義の概念としての文化は広く深い多層性を持つものである以上、独自文化の形式も多種多様であっていい。


今回の万博に出展している各国及び地域のうち、一部の国家は例えばスペイン館のドミンゴフラメンコショーや日本館のミュージカル等のように、歌や踊りに乗せて独自文化を表現したり、デンマーク館やルクセンブルク館は人魚姫像や金色女子像という、各自の文化を象徴するものを会場に運び込み、自らの文化を記号的に表現したりしている。またポーランド館のショパン作品演奏会や、オーストリア館の各種音楽ショーは本国文化の特徴を表現しつつ、その中に歴史の重厚感も盛り込んでいる。イタリア館は会場で革靴制作の手工芸を展示して悠久な手作り文化を表現しているし、フランス館に至っては独自に「味覚」ゾーンを設置してフランス独特の飲食文化を宣伝している。このように、文化の展示において各国はいずれも、観光PRとして来場者に深い文化的感知を残し、かつ各パビリオンで各国の良好なイメージを樹立させるべく、最大限の趣向を凝らしているといえる。

実際、万博は観光業に、出展の機会のみならず無限のビジネスチャンスをもたらす。特に主催国の中国にとっては、万博が引き寄せる巨大な人の流れは疑いなく、観光消費を刺激する絶好のチャンスとなっている。機敏な各地政府、特に上海周辺の観光省・市は、この機を借りて各種の優遇政策を打ち出し、観光客の引寄せを図っている。例えば杭州館は、館内で入場者に、未曾有の優待内容を盛り込んだ旅行クーポン券を配っているし、済寧、南京、貴陽は「万博チケットを見せれば各観光スポット入場料半額」キャンペーンを打ち出して、万博がもたらす旅行熱効果を拡大化している。


また万博開始前、西安は上海の南京路で生身の人間による兵馬俑のパフォーマンスを行ない、注目を呼んで西安観光PRに弾みをつけた。このように国内館は、主に様々な販促・PR等の方式を組み合せるマーケティング方法で観光プロモーションを進めている。


万博の開催は、観光業の発展にとって一つの契機でもあり、同時に試練でもある。開催が観光業に実際どのような変化をもたらすかを知るには時の経過を待たねばならないが、一つ確実に言えるのは、益々激化する観光産業の競争において、文化というファクターが決定的な要素となることであり、今後は観光文化の概念をいかにプロモーションしていくかが観光PR活動の重心となっていくことだろう。


以上