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カンヌリポート ~PRライオンズの審査員室から~ (1)

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(1)カンヌライオンズ 審査基準


電通パブリックリレーションズ 

第2ディレクション局次長 井口 理


今年はカンヌライオンズにPR部門が創設されて4年目。日本からの審査員派遣は3回目を迎えました。PR部門の審査員は世界各国のPR専門エージェンシーのTOPクラス、すなわちCEOやCOO、ファウンダーなどが名を連ねる状況で、日本からもPR専門会社からの参加が望まれていたと聞きましたが、満を持しての参加となりました。


各国のTOPクラスといえども、海外では若いエリートがたくさんいます。自分ももう20年以上この業界にいますから、一家言を持って臨めばその意見も尊重されるだろうと思っていました。しかし、実際に各審査員のプロフィールを読んでみると、ほぼ全員がこの業界20年以上のベテラン!さらにもろもろの受賞歴を携えており、こりゃ気が抜けないなと改めて気を引き締めました。


上の写真はPR部門の審査員20人と審査員長が集合して記念撮影したものです。左端が筆者。真ん中でグリーンのジャケットを着て写っている女性が、今年の審査員長のGail Heinmann氏です。彼女は米大手PR会社 Weber Shandwick社のVice Chairです。


実はPRカテゴリでは、現地での審査を前にネット上での事前審査が課されました。他の部門では現地ぶっつけ本番というところもあるようですが、あまりにも膨大な数を審査しなければならないですし、現地ではよりディスカッションに時間を割こうとの方針から、各審査員に割り振りがされました。その数およそ300エントリー。およそ3日間で2分のエントリービデオ、サマリーを記したプレゼンテーションボード、そして詳細説明のテキストをチェックして各エントリーに点数を付けていきます。点数は1~9点で付けられ、次のステップに進むための「ショートリスト」に残れるかどうかが決まります。


この事前審査を始めると同時に、すでにメールや審査員専用のフェイスブックを通じて、その審査基準についてのディベートが始まりました。「アドエージェンシーの賞獲りに気をつけろ!」「あれはペイドメディア中心のエントリーだ。PR部門から外した方がいいんじゃないか?」といった言葉が飛び交っていて、アド(広告)中心で始まったアワードにおけるPRカテゴリのポジショニングやアイデンティティをどう示していくのか、といったPRパーソンならではの意地みたいなものがここに表れていたような気がします。もしアド系エージェンシーの肩書で参加する審査員がいたら、強く敵視されかねないなあ、と感じるほど。実際、現地でもいかにもなPR視点でディベートがさく裂していたのは確かでした。


ちなみに当カテゴリの審査基準は4つ。①Strategy & Research、②Execution、③Idea & Originality、④Resultで、それぞれの比重は、3:2:2:3というもの。Strategyは課題に対する戦略で、Researchはそれを導き出す事前調査、Executionは戦略に対する戦術、すなわちどんな施策を投入するのかということ、またその施策の実効力なども問われます。さらに当然のことながらカンヌでは特にアイデアやオリジナリティがあるかも大切ですね。ただPRでは若干比重が低い気がします。そして大切なのがResult。日本におけるメディアカバレッジや、ネット上でのインプレッション数にとどまらない本当の成果が求められます。実際の売り上げは上がったのか、また生活者におけるレピュテーションは向上したのか、など。まさに生活者を巻き込んだ目に見える成果が求められます。


ただ、その比重を横目に見ながら点数を入れてはいるものの、全体的に感じたのは、入口からゴールまでの一気通貫さに最も目線がいっていた感じ。なにを課題として発見し、それを解決するための戦略、具体的方策の策定、そしてそこにアイデアがあったかどうか、もちろんこれらがうまくいけば結果は言わずもがなですよね、ということ。カンヌだから、やっぱりアイデアに評価が偏るかな、という予想を見事に裏切り、PRの基本的評価に帰着した感があったように思います。


次号は「カンヌライオンズ 審査プロセス①」です。