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カンヌリポート ~PRライオンズの審査員室から~ (6)

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 カンヌライオンズ 受賞作品の紹介   ②PRに最適なアイデアに富んだもの


電通パブリックリレーションズ

第2ディレクション局次長 井口 理


アワード獲得エントリーの紹介、第二弾です。第一弾は特に社会課題をメイン背景にしたものを取り上げましたが、ここではアイデアが秀逸ないくつかをご紹介。


※ちなみに、チャリティ/ノンプロフィット部門や公共機関が実施したものは、どのカテゴリでもグランプリ候補にはなれないんですよね。(グランプリの「The Most Popular Song」は民間銀行「バンコ・ポプラーレ」のプロジェクトですから大丈夫。)

それらは、全カテゴリをまたいだ「グランプリ・フォー・グッド」の対象になっていくのです。


とはいえ、グランプリを争った「THE BOOK THAT CAN’T WAIT」や、PRライオンズでゴールドを2つ獲得の「ONE COPY SONG」も、それぞれ「新しい作家を育てるため紙の本を読ませたい」「デジタル時代に、もっとそれぞれの楽曲に対しての価値を定着させたい」といった社会的意義を背景とした活動となっています。このように、PR=Public Relations として、社会課題に対して取り組むエントリーに対しては全般的に高い評価がなされていたと感じます。


成果はもちろん、一方ではそのアイデアの特異性の方がむしろ大きく評価されたエントリーもあります。スイスの「THEATRE RIGIBLIC ANNUAL BUSINESS REPORT」は、ステークホルダーとの新しい関係構築方法などを示唆してくれますし、「BYO CUP DAY」はSNSでの情報拡散を極めてシンプルな仕組みで達成しています。ただ単に面白いもの、目を惹くもの、ハッと驚かされるアイデアというよりも、人を動かすためのアイデアという視点が大切になってきます。


■「THE BOOK THAT CAN’T WAIT」(ゴールド)




















最後までグランプリを争った作品。アルゼンチンの小さな本屋さん、エテルナ・カンデシア。出版も手掛けるこの本屋さんが、若手作家育成のために打ったキャンペーン。電子書籍の台頭によって扱われるのは既存の出版物ばかりで新人作家は窮地に。例え、広告宣伝で新人作家の本を売りこんでも、その本が読まずに置きっぱなしな状態が多いことが判明。やはり「読まれてこそ、作家は育つ」と考えて、強制的に読ませる仕組みを構築。すなわち一度買ったら2か月以内に読まないと文字が消えてしまう特殊インクで書籍を出版し、「本の賞味期限」を訴求し、初版は即日完売した。



■「ONE COPY SONG」(ゴールド)





















デジタル時代の音楽は、リリースされた途端にYouTubeやその他のサービスによって拡散され、一気に消費されてしまう。その飽和感からすぐに飽きられてしまうこともしばしば。そんな状況を打破するために、「一度に一人しか聞けない曲」というユニークな仕組みでスウェーデン出身のヒップホップアーティスト、アダム・テンスタのためにNYのエージェンシーR/GAがフェイスブック上で展開したプロモーション。彼らは、フェイスブックのアプリを開発したが、新曲を「今現在聞いている一人」の次に聞く権利を獲得するには、ラインにエントリーし、順番待ちをしなくてはならないというアプリを開発した。SNS上でアーティスト関連の情報をさまざまな手法で発信すればその順番はリアルタイムに繰り上げられていく。これにより自然と新曲に関する情報展開がなされ、ファンも急増。アダムのフェイスブックフォロワーは20倍に膨らんだ。


このページの一番上の授賞式の写真に写っているのは、「ONE COPY SONG」をてがけたR/GAのNick Law氏(左)と審査員長のGail Heimann氏(右)です 。



■「THEATRE RIGIBLIC ANNUAL BUSINESS REPORT」(シルバー)





















スイスの劇場がそのスポンサー向けに決算説明を演劇風に展開。歌ったり踊ったり、で決算数字を伝えて行く。もともと演劇などが好きなスポンサーや献金者に対するユニークでちょっぴりサービスが付加された手法が面白い。日本の株主総会でも自社製品を配ったり食べさせたり、はあるが、こういったスポンサーサービスも洒落ています。既存スポンサーの100%が次年度のサポートを確定したという成果も。



■「BYO CUP DAY」(シルバー)





















オーストラリアのセブンイレブンがアイスドリンク「スラーピー」の売上活性化を狙ったキャンペーン。「自分の好きな入れ物で、いくらでもスラーピーを飲んでください」宣言をし、BYO CUP  (Bring your own cup:自分のカップをもってきてね) Dayを展開。バケツ、トロフィー、果てはマネキンまで、オモシロカップ(?)持参で訪れた消費者が行列、その様子がSNSで拡散され、瞬く間に売り切れ店続出。要は商品に再接触する機会をうまく創り出し、またそういった粋な計らいで共感を生み出したところがポイント。シンプルなアイデアですが、やるとなれば相当の決心が必要ですね。もちろん、クライアントの英断(?)ありきだと思います。


次号は「PRの未来 PRのクリエイティビティとは」です。