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CSRコミュニケーション情報レポート:Vol.4
サプライチェーンCSRからみるビジネスと人権② ~コラボレーションがもたらすエンゲージメント

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コミュニケーションデザイン局 シニアコンサルタント 大川陽子

前回から引き続き、サプライチェーンCSRをテーマに、国際的な動きをふまえ、国内でアプローチを進めているNPO・NGOの動きとともにレポートしたい。


●1社で対応することの限界


『いまや、サプライチェーンにおける労働・人権への対応は企業にとって必要不可欠。リスクマネジメントの観点はもとより、攻めの領域にも入るテーマであり、経営全体でとらえる必要がある』と語るのは、経済人コー円卓会議日本委員会の石田事務局長と岡田ディレクター。


グローバル規模で、国際機関をはじめさまざまなステークホルダーとつながりつつ幅広いネットワークを構築し、日本の企業担当者を集めてサプライチェーンCSRを考える機会を数多く設けているお2人のコメントは現実味を帯びている。


1月には『Sedexを活用するメリット~サプライチェーンCSR情報プラットフォームの紹介』をテーマに、セミナーが開催されていた。サプライチェーンにおける労働・人権をはじめCSRに関連する現場の状況を把握、管理することが求められているなかで、ユニリーバ、ネスレ等をはじめとしたグローバル企業や組織とそのサプライヤーが活用している情報プラットフォームがSedex(Supplier Ethical Data Exchange~サプライヤー倫理情報取引所)である。Sedexは、会員組織550以上、サプライヤー30,000社以上から構成されるイギリスに本拠を置くNPOである。その他、ステークホルダーとして国連グローバルコンパクト等が挙げられる。グローバルサプライチェーンにおける倫理的かつ責任あるビジネス慣行の促進を目的として活動している。彼らが有するのは、主に労働基準、健康と安全、環境、ビジネス慣行の4項目に関する情報を共有・確認できるプラットフォームだ。会員組織は、指定するサプライヤーのセルフアセスメントや監査の結果から管理までのプロセス全体を共有、確認できる。そもそもこのプラットフォームは、サプライヤーが数多くの企業から個別に要請される監査等に応じる労力がかかりすぎるという、主に小売業界(マークス&スペンサー等含む)の声を受けて構築されたものだ。バイヤーとなる企業側も同様、効率化を図れるとともに、リスクの特定ができ、サプライヤーに対して倫理面においてスクリーニングをかけることが可能となる。いわばwin-winの関係性を構築できることになる。


コー円卓会議では、Sedexとの連携を進めているが、なぜそれに至ったのか。


企業1社で取り組んでいくには限界があるからである。


『労働・人権の観点を含むCSRに対する取り組みに対して、NGOをはじめ、社会の目は鋭くなってきている。あわせて、国際規格であるISO26000やG4(サステナビリティ・レポーティング・ガイドライン=GRIガイドラインの第4版)においても、人権デューディリジェンスの観点が色濃く出されていることからもわかるように、これまで通りの実績報告では通じなくなってきた』


実績報告に終わらないためにも、リスクを把握する段階から、NGO等と企業が対話を行い、社会的課題は何か、それに対する企業側の課題は何か、どのように展開していけばよいのか、共有・検討する場づくりが重要となる。


『企業がCSR活動を行うにあたって、NGOをはじめさまざまな関連団体や業界全体等企業群で連携をとることが最も効果を発揮する。それによって、インパクトとスケーラビリティ(拡張性)を狙うことが重要になってくる』と石田氏は言う。


(参考)

経済人コー円卓会議日本委員会 Homepage

「サプライチェーンCSR」


※1月28日開催 Sedex Group・経済人コー円卓会議日本委員会共催CSRセミナー資料より


●コラボレーションがもたらすエンゲージメント


これから数年は特に、世界中から日本企業は注目される。労働・人権、環境問題への対応も重要なテーマだ。いままで国内でサプライチェーンが完結しているから、と安心していた企業も例外ではない。なかでもNGOは企業の取り組みに厳しい目を向けるだろう。世界規模のスポーツイベント時、国際NGOが展開した『プレイフェア・キャンペーン』。スポーツブランドに対して取引工場における過酷な労働環境への抗議であった(ちなみに、上述のSedexはロンドンオリンピックで採用されており、関連するメーカーに対して登録が推奨されている)。こういったリスクに関わる動きはあくまでも一側面にすぎない。翻って、あらゆる層からこれだけ日本に注目が集まる機会はないといえる。企業は社会との関わりをプラス・マイナス両面で改めて見直し、その対応とともにステークホルダーに方針や取り組みの現状を伝えるなかで、プラスの力に変えていくことも可能である。


改めて、Sedexや経済人コー円卓会議日本委員会の動きからもわかるように、CSRの取り組みがステークホルダーとの関係構築で成り立っていることを実感させられる。


キーワードは、コラボレーションとエンゲージメント。


・  NGO等と連携、企業間も可能な限りの連携を行い、社会的課題を把握すること。

・  課題に対しての取り組みを明らかにすること。

・  プロセスから伝えていくこと。

・  ステークホルダーの声に対して柔軟に対応できる体制を整えていること。


NGOをはじめステークホルダーとの対話を重ね、社会的課題と事業活動がもたらすインパクトを把握、必要な要素はデータとして整備していく。そして、企業活動全体でとらえ、対応する取り組みを抽出し、短期的・中長期的視点でロードマップを整理し、ステークホルダーに伝えていくとともに、常に対話をする体制を整えておく。


このようなさまざまな主体とのコラボレーションの動きが、あらゆるステークホルダーとのエンゲージメントにつながるのである。


これからの5~10年は非常に重要な時期であるといえる。そして、今、この時期こそが、企業のCSRに関わる取り組みを見直し、場合によっては急展開させる、またとない機会となるだろう。



筆者 大川陽子プロフィール
(株)電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局シニアコンサルタント。
日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。
非鉄金属メーカーの環境関連部門、企業の環境対応等推進するNPO、
コンサルティング会社(社会・環境問題をテーマとした官公庁、自治体、
企業コンサルティング)を経て電通PR入社。CSRをテーマとしたコミュニケーション支援
に関する企画運営、コンサルティングを担当。