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CSRコミュニケーション情報レポート:Vol.6

CSVをカタチに~地域・社会との距離を縮めるには?

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コミュニケーションデザイン局 シニアコンサルタント 大川陽子

前回、CSV(Creating Shared Value)が社会課題への対応と事業活動との関連性によって価値を生み出す取り組みであることをふまえ、まず社会課題の抽出について触れた。今回は、企業が、地域・社会との距離を縮めるための秘策ともいえる、地域で活躍する中間支援組織※(NPOを支えるNPO)との協働について、団体の活動を通してお伝えする。

※「中間支援組織とは、NPOを支援するNPOといった存在であるが、いろいろな捉え方があり、必ずしも明確に規定された定義があるわけではない。中間支援組織はNPOを育てるインキュベータ(孵卵器、保育器)と比喩されたり、各種資源を提供する側とNPOとの仲介者という意味でインターミディアリーと呼ばれる場合もある。さらに経営体としてのマネジメントを支援することを目的とする場合、MSO(マネジメント、サポート、オーガニゼーション)と呼ばれる。」

(内閣府 平成13年度「中間支援組織の現状と課題に関する調査報告」より抜粋)

1.企業との協働で変わり続ける市民セクターよこはま

協働の考え方、取り組みを積極的に推し進めている印象が強い横浜にて、福祉系団体のネットワークから生まれた認定NPO法人市民セクターよこはま(以降、「セクター」)。1999年の設立から15年ほど活躍を続けている中間支援NPOである。今回、企業との協働に積極的に取り組んでおられる理事・事務局長である吉原明香(よしはら・さやか)さんにお話をうかがった。

(市民セクターよこはま理事・事務局長の吉原さん)

(市民セクターよこはま:事業の様子~地域づくり大学校)

認定特定非営利活動法人市民セクターよこはま
(facebook) https://ja-jp.facebook.com/shiminsectoryokohama

―民間団体、行政、企業との協働を模索し続ける

2002年、当時の横浜市の中田市長の公約の中に「協働」の2文字があった。そこから、セクターは、中田市長への意見書提出や、横浜市市民活動共同オフィスの管理運営の受託、協働のあり方研究会の企画・運営へと、活動の幅を広げる。変わらず軸となっているのは、市民活動を支える立場として、地域を、社会を良くするために政策と暮らしの実際のニーズを近づけていくために活動するということ。社会をより良い方向に変えていくには、どうやっても民間団体、行政、企業の3者で取り組まざるを得ない。行政との関係性は長く、感度があるが、企業との関係づくりはなかなか難しい。「企業で働く一人一人の意識、経営者の意識も変えていく必要性があると実感した」と吉原さん。

横浜には企業の支社が多いこともあり、さまざまな企業担当者からのアプローチもあったが、最終的には担当者の思いだけでとどまってしまい、形ある取り組みとして進まなかった。そのような中、企業との協働事例としてインパクトのある取り組みの一つとして、2010年から始まった〝コミュニティ・スペースを拠点としたまちづくりと認知症啓発〟の取り組みがある。

―〝福祉とまちづくり〟の理念が一致した、製薬会社との協働

セクターは10年ほど前から横浜市および横浜市社会福祉協議会と協働で、認知症になっても、住み慣れた地域で自分らしく暮らすことができる社会を目指す『まちかどケア(認知症ケア)』の取り組みを推進しており、認知症啓発の取り組みについては深い見識をもっていた。また、横浜市は、もともと自治能力の高い地域が多数存在している地域であり、そこで活動している団体は、地域の課題を敏感に感じ取り、次なる方向性も見据えた活動を展開している。そのために住民アンケートなどの実施やニーズの把握を行い、活動に結びつけている団体も多くあるという。今回、企業側からは「地域コミュニティとの連携によって、一人一人に届く認知症啓発を進め、安心して暮らせるまちづくりを目指したい」というビジョンが伝えられていた。そのために、横浜という地域にあった取り組みとして、既存の活動を生かしつつ、認知症啓発にかかる取り組みを提案してほしいという申し出があった。セクターでは、規模は小さいながらもインパクトのある活動を展開している団体も含めさまざまな団体の情報を熟知している。今回は、高齢者が多く集まり、かつ運営側にはサポーターとなる世代も関わっているコミュニティ・スペースを基盤として運営している団体に目を向け、そのなかでも活動力のあるいくつかの団体に声掛けを行った。認知症と地域課題について共通認識を持つべくワールドカフェ形式によるワークショップを行い、その場で企業側からの意向も共有しつつ、最終的に各団体より企画書として企業へ活動提案する方法がとられた。団体側としては、自由に設計してよい、ということに逆に抵抗感もあったそうだが、企業ともすり合わせながら実質的な取り組みを模索し、その効果のはかり方も可能な限り明確にしたうえで検討が進められた。企業側からは、資金的支援、人的支援(人脈の紹介等)、物的支援(資材の提供等)がとられていた。

―効果のはかり方とゴール設定のすり合わせが重要

各団体でさまざまな活動を提案し、その活動ごとに目標設定は異なっていたが、ある自治会館を拠点として展開していた取り組みにおいては、認知症啓発にかかる連続講座を実施、延べ680名の参加者があった。実施した全戸配布アンケートからは、「(受講したことによって)症状が出たと感じたら早めに受診をしよう」と意識する住民が、実際に「受診した」と回答した人を含め9割を超えるという結果が出たという。ただ、このように、すべての活動が量的に、わかりやすい形で示すことができるものではない。テーマ・活動内容によっては、定性的に効果を見る視点も必要になってくる。効果のはかり方は、特に企業と民間団体とでは視点が異なってくる大きな要素だ。それぞれの立場と、取り組みのゴール設定を十分にすり合わせたうえで、それぞれの文脈でとらえる効果のはかり方を模索することも必要になってくるだろう。

2.「カッコいい協働」を目指す

吉原さんに、企業へのメッセージを伺った。

「洗練された協働を目指したい」と吉原さん。
そのためには、地道な取り組みを続けていくこと。そして、双方がこまめに発信し続けること。取り組みの中で、方向性が変わってくることもある。その際は、どう変わったのかも伝えていくことが重要となるという。

「互いのことをたてつつ、進めましょう。そのほうがカッコいいですよね」
この言葉は、協働にあたって、とても重要なメッセージだ。

「取り組みを積み上げ、発信し続けていくことで、その取り組みが社会を変えていく。それは、ゆるぎない企業のイメージアップにつながります」と吉原さん。

そして、「5年後など、将来ビジョンを共有して進めること」

「みんなが幸せになる社会の仕組みをどう作ることができるか。企業と接点をもって進めていきたいと思っています」

市民セクターよこはまでは、企業との協働に関わる取り組みを推進し続けている。2014年度は、神奈川県と協働して(神奈川県が推進するパートナーシップ支援事業の一環として)、『企業・NPO・大学パートナーシップミーティングin 横浜』を主催している。当日は100名を超える参加者のもと、神奈川県のさまざまな企業と、NPOなどの団体、大学が互いの情報を共有し、協働で新しい地域課題を解決する取り組みを生み出すためのマッチングの機会を創出している。神奈川県ではこの3年の取り組みで、30事例ほどの協働事例が挙がっているという。

(パートナーシップミーティングの様子)

神奈川県HP『企業・NPO・大学パートナーシップミーティングin 横浜』
神奈川県HP『企業・NPO・大学パートナーシップ支援事業』

また、横浜市と協働契約を締結し受託している横浜市市民活動支援センターにおける取組として、横浜市内の1400ほどのNPOに対して調査を実施。どういった社会課題をとらえ活動しているか?その成果は?これからはどういった活動を展開していくか?などの活動状況を把握する予定。まだ知られていない課題解決力のあるNPOについて網羅された情報を広く伝えていき、協働が促進されるような基盤づくりも行っていくという。

3.重要なのは企業として〝どんな社会にしたいか〟を明確にすること

市民セクターよこはまのように、力のある中間支援組織は、NPOを支えるNPOとして、地域の社会課題は何か、その解決のための活動はどのようなものか、どんな団体があるかを熟知している。企業として、解決したい社会課題や地域、テーマに応じて中間支援組織にアプローチすることは、CSVにつながる取り組みを進めるにあたっては非常に有効だと考える。

ただし、重要になってくるのは以下の点だ。

  • ・企業は、事業活動を踏まえつつ〝どんな社会にしたいか〟というビジョンを明確にすること。
  • ・そのビジョンを達成するために、協働で取り組む効果(定量的、定性的両方の視点で)は何か、を明確にしておくこと。
  • ・取り組んだ先のゴールイメージを可能な限り具体的にしておくこと。

これらを企業側から明確に伝え、双方で十分に検討、共有することができて初めて、協働が実質的な取り組みとなる。確かに、取り組みのプロセスにおいて、知り得なかった社会課題に近づくことはできる。新たなネットワークができ、新たな取り組みが生み出されることも期待できる。が、前提として、何をなし得たいか明確に提示し、双方で目指すべき方向性と効果=見いだせるであろう価値を、十分にすり合わせておくことが重要だ。NPO等民間団体、関連地域をはじめ、ステークホルダーと共通価値を創造するにあたっての必須条件である。

以 上