中国 Report 09 中国の食品安全法について

2009年6月1日、『中華人民共和国食品安全法』が正式に施行された。
同方案の施行前、中国の食品安全は1995年制定の『中華人民共和国食品衛生法』を軸としてきた。しかし近年になって、中国国内では粉ミルク事件、加工食品への着色料問題、食中毒事件など一連の食品安全事故が相次いで起きた。特に昨年の「S粉ミルク事件」が契機となり、食品安全問題は、国民全体で関心の非常に高い問題となった。
新たな『食品安全法』は、全十章104条からなる。これまでの『食品衛生法』を基礎とし、食品に対する監督管理、検査、リコール、食品添加物、及び食品安全事故の処理方法等、関連問題にそれぞれに明確な規定を設けている。そのほか新法は、現在の実際の状況について以下のような対応性のある条項を設けている。
第一に、食品に関する検査免除措置が廃止された。S粉ミルク事件が起きるまで、「検査免除製品」は食品安全の保障とみなされており、消費者が製品を購入する際の信頼の根拠ともなっていた。しかし、メラミン添加事件が明るみになるに従い、検査免除企業も続々とメラミン添加との関連が指摘され、「検査免除製品」の公的信頼性はなくなってしまった。新法では、食品安全監督管理部門は、食品について検査免除措置を廃止し、定期的又は不定期に食品に抜取検査を行うよう規定している。これにより、食品検査の「一回合格すれば後は問題としない」という規則はなくなり、食品安全分野には「特権」が存在しないことになった。
第二に、食品生産経営者の食品安全第一責任者としての責任が重くなり、違法行為については厳罰化された。違法行為のあった食品生産経営者には、不法所得の没収のほか、商品価額の最高10倍の罰金を課し、またその営業許可証を取り消すと規定している。
第三に、広報役(イメージキャラクター)を務めるスターにも責任を課した。この条項の制定は、スター等有名人による社会的責任の負担を促すものであり、日々過激になるばかりの虚偽広告についても抑止効果が期待される。
第四に、食品添加物リストに記載のない添加物を一律使用禁止とした。新法は、食品添加物の生産と利用を明確に規範化し、食品の生産においては、認可された食品添加物以外の化学物質その他人体の健康に危害を与え得る物質を使用してはならないと規定している。
第五に、健康食品の監督管理を初めて法律の条文に盛り込んだ。国家は、特定の保健機能を持つと称する食品に対し、厳格に監督管理を実行するものと規定している。
全体的に見て、この新法は中国が食品安全の規範化に向け踏み出した重要な一歩だといえる。
現在中国社会は転換期にあり、価値観が拝金主義の悪影響に染まっている。利益の追求のため、食品安全法令への抵触を厭わない生産者及び経営者も多い。また、中国の農業生産の規模化と規範化の水準が低く、食品生産加工に携わる中小企業の素質も低い。これが、近年中国の食品安全問題が頻発する主な原因となっている。食品安全問題の減少と杜絶のため、現段階で『食品安全法』が公布されることは、中国の食品安全問題の向上にとって重要な意義を持つ。
しかし、『食品安全法』は中国で食品安全問題が二度と出現しないことを保証し得るものでは決してない。政府は、監督管理の拡大に加え、農業分野でも幅広い改革を行い、食品価格が市場相場で上下するよう積極的に誘導していく必要がある。食品メーカーに奨励政策を与え、彼らに食品の品質への関心を持たせ、「品質を保証して初めて利益が保証される」ことを原則として、生産に対する食品メーカーの情熱を引き出すことこそ、食品の安全生産が辿るべき道ではないだろうか。



