審査員日記

国田 智子

国田 智子
(常務執行役員)

海外PRアワードの審査にまつわるあれこれや受賞作品の紹介をしていきます。

「SABRE Awards Asia-Pacific 2020」審査員報告

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その1~SABRE Awardsの基本と今年の傾向編~

 

<写真提供:PRovoke Media>

1年ぶりの審査員日記です。こんにちは。

今回は、PR分野を対象としたアワードとしては世界最大級の「SABRE Awards」のアジア太平洋地域版「SABRE Awards Asia-Pacific(セイバーアワード・アジアパシフィック)2020」について、2回にわたって報告します。

1年前にはまったく想像ができなかったコロナ禍により、PR・広告業界も大きな影響を受けています。毎年6月にフランスで開催される業界最大のアワードフェスティバル「Cannes Lions International Festival of Creativity(カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル)」、それから昨年こちらで紹介した同アジア版の「Spikes Asia(スパイクスアジア)」は、今年いずれも中止となりました。

その中で例年通り開催された「SABRE Awards」。「Superior Achievement in Branding and Reputation and Engagement」の略で、海外のPR業界では最も注目されているPRアワードです。その名の通り、ブランディングおよびレピュテーション、エンゲージメントの構築において、優れた業績を収めたPRキャンペーンが表彰されます。

国際的なPRの業界情報メディアであるPRovoke Media (旧The Holmes Report  ※2020年2月にリブランド) が主催し、北米で1989年に誕生、アジア太平洋地域版は2009年からスタートしました。同地域の優れたPRキャンペーンや企業/団体、PR会社、PR会社のネットワークなどが対象で、PR会社だけではなく、企業や教育機関、政府などの団体から広くエントリーできます。さらに、世界各地域で受賞したキャンペーンの中からグローバルSABREが選ばれます。

今年、私は4回目となる審査員を務めました。「SABRE Awards Asia-Pacific 2020(以下、SABRE)」の審査員は、自薦、他薦含めてPR会社や事業会社(クライアント)のコミュニケーション部門のディレクター・マネージャークラス60人以上で構成されています。SABREの特徴は、業界別、地域別、業務分野別など、100以上のカテゴリーがあることです(従ってエントリー数も受賞者も多い)。審査員は主催者から一人3、4カテゴリーを割り当てられ、各カテゴリーの上位5エントリーに順位を付けてオンライン上で投票する仕組みになっています。一つ一つを細かく採点しなければならない「Spikes Asia」のオンライン投票に比べると審査員の負担は軽いといえます。また、通常時であっても「Spikes Asia」のように審査員が集まって2次審査をすることはなく、受賞候補のショートリストの作成から最終的な受賞決定までを主催者サイドが行うという点も大きく異なります。

今年の審査で驚いたのは、例年3、4カテゴリーで合計100から150くらいのエントリーを審査しなければならないところ、合計でわずか35件程度だったこと。審査に1週間は使う覚悟でいましたが、3日程度で終わってしまいました。主催者によると例年の全体エントリー数が1600件程度のところ、今年は1000件程度だったとのことで、ここにもコロナの影響が見て取れます。

SABREは、ワードでもパワポでも形式自由の文書のみで応募でき、ビジュアルなどの付帯資料やケースフィルム(活動内容や成果を2分程度の動画で紹介するもの)の添付も可能です。審査員にとっては、ケースフィルムは非常にありがたく、英語のテキストだけでは分かりにくい活動の全体像をつかむことができます。しかし、今年はケースフィルムを提出したエントリーは非常に少なく、推察ですが、カンヌやスパイクスの中止により、費用も手間もかかるフィルムの制作をやらない企業が増えたのでは、と思います。結果として、ケースフィルムがない受賞作品が結構ありました。

今回割り当てられたのは、業界(Industry sectors)から「ソフトウエア(Technology: Software & Services)」と「非営利団体(Not-for-Profit Organizations)」、実施分野(Practice areas)から「デジタルキャンペーン(Digital Campaign)」の3カテゴリーでした(どうやって決めているのかは不明です)。

全体的な傾向としては、残念ながら例年に比べてレベルは低かったように思います。これは、そもそものエントリー数の少なさと、コロナ禍によってなかなか思い切ったキャンペーンがやりにくかった社会環境の影響があったのでしょう。もちろん、光っているエントリーも複数ありました。また、新型コロナ(COVID-19)対応をテーマとするキャンペーンが多く見られ、私の担当部門でも、「ソフトウエア」および「デジタルキャンペーン」では、コロナ関連のエントリーが受賞しました。

アワードの発表・表彰式は9月24日にオンラインで開催されました。通常は香港のホテルを会場にディナー形式で開催するのですが、今年はすべてオンラインにて代替されました。リアル表彰式では、渡航費用の問題もあり参加のハードルは高いのですが、オンラインであれば、参加費は有料とはいえ多くのメンバーが参加できますから、メリットもあります。主催者によると、例年より多い300人程度の参加者があったとのこと。当社もショートリストに残った3エントリーのメイン担当者全員が表彰式に参加し、発表の瞬間をリアルタイムで迎えることができました。

次回は今年の受賞キャンペーンを幾つか紹介しますので、お楽しみに。