審査員日記

国田 智子

国田 智子
(常務執行役員)

海外PRアワードの審査にまつわるあれこれや受賞作品の紹介をしていきます。

「SABRE Awards Asia-Pacific 2020」審査員報告その2

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SABRE Awards今年の受賞キャンペーン

<写真提供:PRovoke Media> PRovoke Mediaの創設者Paul Holmes氏

 

前回に続きまして、私が審査員を務めたアジア太平洋地域版「SABRE Awards Asia-Pacific(セイバーアワード・アジアパシフィック)2020(以下、SABRE)」ついて報告します。

「Spikes Asia」では、7人の審査員が約300あるPR部門の全エントリーを審査するため、応募の全体像が把握できるのですが、SABREでは自分の担当カテゴリーのエントリーしか見ることができません。一人の審査員が知ることができるのは、ほんの一部分、ということです。具体的に自分のケースでいうと、合計(延べ)約1000と主催者が発表しているエントリーのうち、3カテゴリー計でわずか35。また、「Spikes Asia」では全受賞作品のケースフィルムをサイトで公開していますが、SABREではタイトルとクライアント名、PR会社名しか公開されないので、受賞発表後も具体的な中身が分からないものがかなりあります。

SABREでは各カテゴリーで1作品が受賞しますが、さらに全体の中から上位5作品が「PLATINUM SABRE AWARD FOR BEST IN SHOW」として表彰されます。今年栄えある1位になったのは、Oglivyオーストラリアによるケンタッキーフライドチキン(KFC)のキャンペーン「Michelin Impossible」。「Spikes Asia 2019」で受賞した「マックピックル」といい、審査をする度にオーストラリア人のアイデアセンスに感心するのですが、この作品もKFCをミシュランガイドに載せようと、フランスのガイド発行者まで巻き込んで奮闘する話をPR素材にしたものです。ファストフードとミシュランの組み合わせという大逆説を生かし、アイデアからエグゼキューションまでが練られた秀逸な内容です。

日本からは当社と電通が共同応募した(株)ライオンの「Saving Laundry from Zombie Odors(洗っても蘇るイヤなニオイ「ゾンビ臭」をやっつけろ!『トップ クリアリキッド抗菌』)」が4位に入りました。こちらは、洗濯用洗剤のPRで、消費者が衣類を洗っても戻ってくるイヤな臭いに悩んでいることを調査で明らかにし、その臭いを「ゾンビ臭」と名付けて退治をするというキャンペーン。まず調査でファクトをつかみ、ゾンビ臭という分かりやすいコンセプトメイクとネーミング、ゾンビ退治をイメージしてキャラクターをうまく活用した動画など、アイデアづくりから情報流通までがトータルに設計された内容となっています。

全体の5位にランクインした「The Perfect Voiceovers」は、マーケティングPRの上記2エントリーとは異なり、いわゆるソーシャルグッド系のエントリーになります。私が審査を担当した「Not-For-Profit Organizations(非営利団体)」部門でも受賞しました。こちらはEdelmanシンガポールによるもので、シェルターにいる保護犬への認知・関心を高めるためのキャンペーンです。身体に障がいを抱えたり、人間に虐待されたりした保護犬と、同じように病気や障がい、虐待の経験を持っている人間の姿をオーバーラップさせた動画を通じて、懸命に生きる犬たちの魅力を伝えています。エントリーシートによれば、このキャンペーンで保護犬の引き取りに関する問い合わせが21%増えたということです。

「The Perfect Voiceovers」動画はこちらから(英語)
https://www.youtube.com/watch?v=1TLfjgtJAY0

なお、2位には、中国BlueFocus Digitalからのエントリーで、有名女優をキャラクターに起用し、社会的に語ることがタブーとされがちな女性の生理をテーマとした生理用品の「Liberating Our Periods_Libresse Women Marketing Campaign」が入りました。広告、ソーシャルメディア、インフルエンサーなどを多角的に活用し、売り上げ面でも大きな成果を収めたキャンペーンです。こちらは、私が審査した「Digital Campaign」部門にもエントリーされていましが(同部門では受賞せず)、女性のエンパワーメントに関するコミュニケーションにはまだまだ可能性があることを示した受賞でした。

また、3位には、「Museum of Claims」というシンガポールAKA Asia & TBWAのエントリーが入賞しました。こちらは美術館に設置された複数の彫刻(腕が途中で折れたりしている)が、(CGで)愚痴り合って、人生何があるかわからないから、保険に入りましょう、で落とすというマニュライフ生命のキャンペーンです。私の審査対象外なのでエントリーシートを見ておらず詳細が分かりませんが、彫刻にしゃべらせるというインパクトが受けたのかもしれません。

こうして上位5作品を見ると、キャンペーンの根幹となるコアアイデアの面白さ、独創性、説得力が重要であることが改めて感じられます。

<写真提供:PRovoke Media> PRovoke MediaのCEO兼編集長Arun Sudhaman氏

10月21日(日本時間10月22日)に、各地域からグローバル全体の上位40エントリーの順位を発表する「2020 Global SABRE Awards」が行われました。全体で5500(重複含む)を超えるエントリーのなかで、「Michelin Impossible」は3位、「Saving Laundry from Zombie Odors」は21位と発表されました。

 

上位40エントリーは以下のサイトで公開されています。動画もアップされていますので、ぜひご覧ください。

→ PRovoke Media Global SABRE Awards 

最後に、来年の「SABRE Awards Asia-Pacific 2021」授賞式は、なんと初めて日本(東京)で開催されることが決まっています。国内の多くのキャンペーンが応募され、受賞することを楽しみにしています!