うたかた思考

牧口 征弘

牧口 征弘
(代表取締役社長執行役員)

日々浮かんでは消えていく思いや考え。仕事の糧になるものもあれば、そうでないものも。
どう活かすかは自分次第なのかもしれません。

東京スタジアムの親子

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 昨年2019年は、自分にとって、ラグビーを発見した年でした。そう、日本で開催されたワールドカップにおいて、それまで生の試合観戦経験が無かった身として、その魅力にドはまりしたのです。

 大会が始まる直前までは、チケットを手に入れるのが困難とか、そもそも値が張るとか、テレビでの放送すらまともに見たことないとか、障壁も高く縁遠いものだと思っていました。ところが、会期が近づくにつれ、心の奥底に潜むミーハー魂に徐々に火が付いて、公式チケットサイトをチェックし続ける日々が始まりました。

結果的に何試合観戦したかは、思い起こすだけで財布が凍り付きそうなのでやめておきます。しかし、その体験はまさに “priceless” by Mastercardとも言うべきで、いくら使ったなどというのは野暮の極みです。何しろ、「4年に一度じゃない。一生に一度だ!」なのですから。

専らサッカー観戦ばかりしていた人間には、実は、開幕戦のありがたみもよく分かっていなかったかもしれません。ただ、ここ日本でこれだけの熱狂が実現しているということに、妙に感慨を覚えました。

その日、一組の親子がいたことを覚えています。ラグビーが大好き過ぎて、すぐにでもプレーできるような日本代表ジャージー&スパイク&ヘッドギア姿で会場のお客さんたちをあおっているお父さんとおぼしき人物と、その後を恥ずかしそうに付いてくる小学校中学年ぐらいの女の子。「あー、嫌々連れてこられたんだなぁ」と思って、しばらく気の毒に思っていました。が、よくよくその二人の様子を見ていると、娘さんから父親への愛情がジワジワと伝わってくるのです。

「何か、うちのお父さんが盛り上がり過ぎちゃってごめんなさい。でも、この日が来るのをずーっと待ってたんです。昨日なんか、当然、全然眠れていないんです。今日も朝から興奮しっぱなしで、そのままのテンションで来ちゃったんです。皆さんにはちょっとうるさいかもしれませんが、ご迷惑はお掛けしませんので、許してやってください。私がちゃんと見張っていますから」

とでも言いたげな温かな目線で、父親を見守り、客席に目配せしているのです。どっちが子供なのやら。

 試合が始まる前なのに、こちらもすっかり幸せな気分になってしまいました。スポーツとそれを取り巻く人間たちの善なる一面を、垣間見るような気がしました。

 去る11月2日は、昨年の大会決勝日に当たります。開幕の9月20日に出会ったあの親子は、今頃どこでどうしているのだろう。変わり過ぎた世の中で、ふと脳裏に浮かんできてしまいました。

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。