うたかた思考

牧口 征弘

牧口 征弘
(代表取締役社長執行役員)

日々浮かんでは消えていく思いや考え。仕事の糧になるものもあれば、そうでないものも。
どう活かすかは自分次第なのかもしれません。

音楽の力

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 ウィーン・フィルがついにやって来ました。と言われても、詳しい方々からは「いやいや。毎年のように来日公演やってますよね」と、ご指摘を受けそうです。それでもあえて、「ついに」やって来たと言わせてもらうのには訳があります。

 今年の来日公演に関しては、昨今の状況に鑑み実現の可否が直前まで未決定のままでした。数々の他の来日公演は次々に中止または延期というお知らせが届く中、ウィーン・フィルも同じ列に並ぶのだろうと思っていました。

 ところが、最初の公演日のわずか6日前、開催決定の朗報が飛び込んできました。チャーター機での来日、貸し切り車両での国内移動、コンサートホールと宿泊施設間の移動以外の外出一切禁止等々、徹底した感染防止対策を施した上での、決行です。

 まずは、演奏家たちのプロフェッショナリズムに驚嘆すると同時に、公演を全面的にバックアップする、オーストリア政府、日本政府をはじめとした公演関係者の方々の執念に感服いたしました。

 北九州から東京まで、追加公演を含めると計8回の公演日程。このご時世だからこそのクラシックファンたちの歓喜の声が、全国から響いてくるようでした。現代の巨匠ヴァレリー・ゲルギエフ指揮による、名門ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演。ただでさえ高い期待感が、幾倍にも増していきます。

 さて、当日。この日の演目の最後は、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」。ゲルギエフのおはことも言うべき名曲です。異例のことながら、演奏に入る前にステージ上から案内がありました。曲の終わりに、世界中のCOVID-19の犠牲者に黙とうを捧げますと。

 その言葉に感じたのは、音楽家たちの使命。いかなる時代にあっても、音楽を奏で、継いでいく者たちの責任。いみじくも、ステージからの言葉の中にも、このタイミングで演奏が許されていることの意義を重く受け止める趣旨の発言がありました。まさに、世界中で演奏ができなくて苦しんでいる仲間たちのための演奏でもあるのです。

 聴衆たちも、思い思いに、今この時にこの演奏に触れる意義を深くかみ締めたはずです。そして、きっと共通して再認識したことは、こんな当たり前のことではないでしょうか。音楽は人を癒やし、救うのだと。

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。