うたかた思考

牧口 征弘

牧口 征弘
(代表取締役社長執行役員)

日々浮かんでは消えていく思いや考え。仕事の糧になるものもあれば、そうでないものも。
どう活かすかは自分次第なのかもしれません。

アパレル・タクシー

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 スペインが誇る世界的な映画監督ペドロ・アルモドバルの初期の怪作に、「神経衰弱ぎりぎりの女たち」というのがあります。その中で随所に登場するのが、マンボ・タクシー。常に車内にマンボが流れていて、一度乗ったら忘れようも無さそうな、キャラの濃い車です。

 今回私がたまたま乗ったのも、なかなか印象深いタクシーでした。行く先を告げると、「いい仕事ありがとうございます!」との運転手さんの声。乗車料金にして大体3500円前後になろうかというところですが、のっけからそんなに感謝されるほどのことでもないかなと。でも、そう言われて悪い気分はしません。

 この運転手さん、よくしゃべるお調子者(ご自身の発言に基づきます)の方で、結局、到着まで約30分間ほぼ独演会でした。

「いやー、緊急事態宣言が出ちゃったので、お客さんサッパリですよ」から始まり、「こう見えて60代後半なんで、もう最後の仕事だと思って頑張ってます」と続きます。こちらの「それで、以前はどんな仕事をされていたんですか?」の問いに、「実はね、アパレル業界だったんですよ」とつながっていきます。

「なるほど、それはまた随分と違う仕事でしたね」と返すと、「もうバブルの時期だったんで、さんざんいい思いさせてもらいましたよ」とのこと。それからは出るは出るは、80~90年代のアパレル営業マンの武勇伝の数々。基本飛び込み営業で全国中を開拓しまくって、行った先々では面白いことばっかりだったとか何とか。

しかも、当時はかなりモテたらしく、とある自動車メーカーのショールーム勤めの女性とお付き合いをしていたとかいう、聞いてもいない艶っぽい話まで飛び出す始末。これって、普通に聞いていたら単なる自慢話で、途中からムカついてきても不思議ではないのですが、

なぜかそんなこともありません。ひとえに、この運転手さんの人柄と、その時々の仕事を精いっぱい楽しんでいる姿勢によるのではないかと思いました。

誰しも働いていればいいことばかりではなく、場合によってはつらいことの方が多いかもしれません。でも、だからといって不平不満ばかり口にしていても、状況の打開にはつながらないでしょう。目の前の仕事に正面から向き合って、なるべく明るい側を見て物事を進めていく。そんな大事なことを思い起こさせてくれる、偶然の出会いでした。

「今日は本当にいい仕事をありがとうございました!」と、降車時に再びの快声。感謝の気持ちは我々を照らすものだと、これもまた学びでした。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。