うたかた思考

牧口 征弘

牧口 征弘
(代表取締役社長執行役員)

日々浮かんでは消えていく思いや考え。仕事の糧になるものもあれば、そうでないものも。
どう活かすかは自分次第なのかもしれません。

十年一日

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 九州生まれ九州育ちの自分にとって、東北は縁遠い地域でした。それが急に身近な存在になったきっかけは、皮肉なことに、東日本大震災でした。

 当時、仕事の絡みもあり、たびたび訪れるようになった東北。中でも、宮城県の南三陸町には何度も通い、地元の方々との交流も相当にありました。この南三陸をはじめ、土地土地の名前をしっかりと記憶に刻むようになったのも、現地に足を運ぶようになってからです。

 それまで東北といえば、最大都市である仙台以外にはあまり縁が無かった身としては、一気にその魅力を知る機会になりました。

 特に、地元の人たちの、九州人とは全く違う質の芯の強さ(九州の人がひ弱という意味ではありません)、静かな中にも前向きな気持ちを失わない気丈さ、といった人柄は、都会から「被災地」を訪れる我々にとって、さまざまな意味で驚きに満ちたものでした。

 あれだけの体験をくぐり抜け、目の前にすさまじい光景が残っているにもかかわらず、急にやって来た我々のような外の人間を、じわーっと受け止め受け入れてくれる懐の深さに気持ちを動かされた覚えがあります。

 それから、あの有名な三陸海岸沿いの道を車で走破したこともありました。もちろん、途中途中には震災と津波の被害が生々しい場所が残っているのですが、海側に目をやれば、人間の営みとは離れた自然の絶景が昔も今も未来もあり続ける、という状況でした。

 左に変わることのない大自然の威容、右に変わり果ててしまった人々の暮らしの基盤。二つに挟まれ走りつつ、世の無常に思いをはせたものでした。

 気付けばあの日から10年が過ぎ、東北の地に向かう頻度も低くなってしまいました。3月11日の前後にテレビで見た現地の様子は、当時とは打って変わったものでした。かさ上げ地や高く分厚い防波堤、きれいに整備された商店街、地域を貫く自動車専用道路。その全てが、人々の不屈の精神の象徴のように見えました。

 遠からぬうちに、ゆっくりと時間をかけて、再び東北を巡っていきたい。そう思わせてくれた、10年目のこの3月でした。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。