うたかた思考

牧口 征弘

牧口 征弘
(代表取締役社長執行役員)

日々浮かんでは消えていく思いや考え。仕事の糧になるものもあれば、そうでないものも。
どう活かすかは自分次第なのかもしれません。

諸行無常

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 東京は九段下にあるホテルグランドパレス。いや、この原稿が出る頃には、「あった」と過去形になっているはずです。この6月末をもって営業終了。約半世紀の歴史に幕を下ろすことになりました。

 実は、個人的に縁の深い場所でした。両親の同級生が勤務していたこともあり、大学受験の際に長期滞在をしました。おかげさまで無事合格し、上京してからも何かと利用する機会が多かったです。中でも、1階のレストラン「カトレア」で出されるビーフカレーは、我がソウルフードとも言うべき逸品。あの味がもうなくなってしまうかと思うと、寂しさもひとしおです。

 最後のご挨拶がてらに先日立ち寄った帰り道、湯島天神近くを通りかかると、そこにはまた別の衝撃が待っていました。何と、江知勝が消えていたのです。

 この江知勝は1871年創業。漱石ら名だたる文豪たちに愛された、歴史深いすき焼きの名店。まさか、この老舗が忽然と姿を消して、マンションに建て替わろうとしているとは。よくよく調べてみると、閉店の時期は2020年の1月末。閉店の理由は新型コロナの影響ではなく、建物の老朽化と後継者不足だとか。あの絶品のすき焼きと風情ある店構えに、よもや永遠に触れることができなくなるとは、思ってもみませんでした(それにしては、気付くのが遅過ぎますけど)。

 歴史や伝統は消失することもあれば、大きく変化を遂げることもあります。当然のように存続すると考えるのではなく、日々の営みの積み重ねの果てに新たな一日がある。そんなことをつらつら考えながら、神田方面に向かってみました。

 目的地は、近江屋洋菓子店。こちらも、1884年に創業。戦後に洋菓子店へと業態替えをされてから現在まで続く、名店中の名店です。少し前に、昭和41年築の店舗の大改修が終了したとのことで、完成具合を拝見すべく寄らせていただきました。

 実は事前に知っていたことですが、大改修と言いながら、見た目は全く変わっていません。独特のブルーを使った天井やブラウン基調の木目の壁、ランダムなパターンが楽しい石造りの床。何もかもが、ほぼ改修前と同じです。何だか嬉しくなってしまいました。そこに感じたのは、老舗の誇りと責任。変えない覚悟の見事さ。

 頭上に広がる近江屋ブルー(勝手に名付けました)を仰ぎながら、これからも通わねばと思いました。もちろん、その洋菓子の美味を求めて。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。