うたかた思考

牧口 征弘

牧口 征弘
(代表取締役社長執行役員)

日々浮かんでは消えていく思いや考え。仕事の糧になるものもあれば、そうでないものも。
どう活かすかは自分次第なのかもしれません。

不便を楽しむ

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 もう10年以上前の話になりますが、職場の先輩がこう言っていたのを思い出しました。「俺、最近一人キャンプにはまっててさ」。

 正直、何が楽しいんだろうと、それを聞いて思いました。キャンプといえば、何人かで行って、飯ごうでご飯炊いたりして、もちろんカレーを作って、たき火を囲んで普段語らないようなことを語ったり、夏場だったら怪談が定番だったり、何なら花火でもやってみますか、と一人で楽しめるようなものではないはずですよと。

 「で、一人でキャンプ行って何するんですか?」と尋ねると、「ウイスキー飲んだり、本読んだり、何もせずにボーっとしたり…」とのこと。だったらなおのこと、わざわざキャンプに行ってまですることじゃないですよね、との思いを強くしました。と同時に、「もしかして、この人、家に居場所無いんじゃないかな」とも疑ってみました。

 さて、そんなことがあってから今。『ヒロシのぼっちキャンプ』というテレビ番組が人気です。以前と同じく、「え? そんなことの何が楽しいんですかね?」と思うのもつかの間。これがなかなか面白いことになっています。

 そうはいっても、毎回毎回ドラマチックな展開が待っているということではなく、ピン芸人のヒロシさんが、一人でキャンプをするだけのことです(もちろん、番組のスタッフが同行しているので、厳密には一人ではありませんが)。

 地元のスーパーに立ち寄って、地場の食材を調達する。キャンプ場でなるべく人のいない場所を探して、テントを張る。たき火用の薪を周囲から拾い集めてくる。自分で火をおこして、美味しいのか美味しくないのかよく分からない料理を作ってみる。ランタンに火をともして、絵になりそうな場所に置いてみる。そして、何かをするたびに、「これいい!」とか「あ、全然ダメだ」とか、自分でツッコミを入れる。大体こんな進み具合です。

 これを観ていて何が面白いのか。この便利さに満ち満ちた世の中で、あえて、自分の力と工夫だけで、不確定要素の多い自然の中でなんとかやっていく。これを眺めるのが面白いのだと思います。人間こうやって暮らしていたんだろうなぁ、という太古のイメージもうっすらと浮かべつつ。

 だからといって、自分もやるかというと、決してそのようなことはありません。何しろ、虫が苦手なもので。文明に支えられた環境から、人が不便を楽しんでいるのを見守っている、という位置付けで充分です。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。