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広報会議「データで読み解く企業ブランディングの未来」積水ハウス事例 (2020年8月号)

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ブランディング

企業広報戦略研究所では、広報会議にて「データで読み解く企業ブランディングの未来」と題し、データドリブンな企業ブランディングのこれからをひも解く指南役として2020年7月より連載を開始しました。
第1回は、「ニューノーマル時代の従業員エンゲージメント」として、事例を交えて解説しています。
本トピックスでは、「積水ハウス」の事例の詳細について紹介していきます。

 


 

積水ハウス株式会社が発表した連結決算(2020年2~4月期)は、純利益が前年同期比29%増の306億円で過去最高を更新。組織としての強さは一体どこにあるのだろうか。

同社は男性社員に子どもが3歳になるまでに1か月以上の育児休業取得を推進、取得率において2019年に100%を達成。
「イクメン休業」の取り組みを主導するダイバーシティ推進担当の伊藤みどり執行役員にお話を聞いてみました。

男性の育児休業取得を「全社的」な動きとして推進した目的はどういった点にあるのでしょうか?

2018年に新社長として仲井が就任し、会社の方向性として「『わが家』を世界一幸せな場所にする」というグローバルビジョンを定め、「ESG経営のリーディングカンパニーを目指す」と会社の方向性をまず大きく決めたことにあります。そのビジョンを実現するためには、「世界一幸せな『わが家』」を提供する我々従業員がまずは幸せでなければ、(そのビジョンは)達成できないと。まずは従業員に幸せになって欲しいという想いがありました。

従業員がやりがいをもって会社に貢献し、自分らしい生活も大事にする。だからこそ良い仕事ができる。そういう会社にしていかなくてはいけないし、そこに向かうことが「イクメン休業」推進の意義があります。

 

 

現場からは不満も多く出たと思いますが、どのようにして理解が得られるようになったのでしょうか?

まずは目的を理解してもらうことに力点を置きました。全体としては3つのステップに分け、第1ステップでは会社として取り組む目的を理解してもらう、第2ステップでは社員の意識改革、第3ステップでは様々な部署で取得している事例を継続的に発信することに努めました。

第1ステップでは、「イクメン休業」の意義の理解ということで「本人」「職場」「お客様」「会社」それぞれに意義があることをしっかり伝えました。その上で、休業取得しやすい環境づくりとして、ツールと勤怠管理システムの整備を行いました。「家族ミーティングシート」※1を使い、どのタイミングでどの様に役割を分担どのように過ごすかを話し合ってもらいます。職場でも「取得計画書」でいつどの仕事を誰にどのように引き継ぐかを上司と話し合いサポートします。合わせて勤怠管理による申請の簡素化取得状況の共有化と取得準備喚起のアラートなどのシステムの整備も行いました。

第2ステップでは意識改革です。対象者とその上司合わせて約1900名に向け、社長自身がイクメン休業制度に込めた想いを直接語りかけ、取り組み事例を紹介するなど会社の本気度を伝えることに注力し、本気度が伝えられたと思います。

第3ステップでは、実際様々な取得した対象者の事例を継続的に発信し、同時に相談窓口を設け、現場での困りごとを1対1で対応しながら課題を1つ1つ解決し、一方的に「やれ」ではなく会社として取得しやすい環境を整備できたのではないでしょうか。

この各ステップを通じ、家庭でも職場でも役割を明確にする話し合いや準備を整えて育休に入ることがポイントだとわかってきました。実際、アンケートでは総合評価で「良かった」「非常に良かった」の回答が本人95.8%、配偶者94%という結果を得られています。配偶者の感想では「やっと父親らしくなった」「日頃の大変さをわかってくれた」、本人は「妻への感謝」「家族の絆が深まった」との声が多くを占めました。

 

 

実際、どのような効果が会社、現場として得られたのでしょうか?

住宅メーカーとして、設計においては育児や家事の経験により提案に配慮の幅が広がったことや(住宅の)導線など机上で学んだことと実際の差を肌身で感じている社員の声を聴いています。

営業においてもお客さまと今までにない「共感」の幅が広がっています。「泣き止まない大変さ」の体験から会話がより深いものになり、顕在化していないニーズまで引き出すきっかけにつながる、それは言葉を変えればお客様の信頼を得るきっかけが1つ増えたということになります。

 

 

イクメン休業は、単純に人を休ませること=「コスト」にならないのでしょうか?

よく「抜けた穴を本社などから人材サポートしないのか?」と聞かれますが、実際やってみて1か月程度であれば現場で補完する方がやりやすい。上司が休めば部下が代役をし、上下関係でも横の関係でも協力し合う体制は「人材育成スキームになる」とある投資家から評価を受けています。このようにコストはかかっているようでプラスに作用しているのが現状なのです。

 

 

イクメン休業の導入を検討している企業担当者に向けてメッセージをお願いします。

男性の育児休業取得をESG経営など社会全体の“大きな枠組み”で捉えることで企業価値の向上にもつながっていきます。実際、当社では実に様々なメリットがうまれています。

企業側が条件的サポートと取得しやすい仕組み、職場環境を準備すれば上手くいくので、諦めずにやり続けていただき是非価値を実感していただきたいです。

 

※積水ハウスでは男性の育児休業を取得しやすい仕組みとして、育児休業を取得する際に議論する上で「家族ミーティングシート」や「取得計画書」など家族や職場でのコミュニケーションを円滑にするツールを開発。その後「家族ミーティングシート」はオープンソースとし、他の企業でも参考にするなど反響を呼んでいる。 

https://www.sekisuihouse.co.jp/ikukyu/pdf/meeting-sheet.pdf(ダウンロードはこちらから)

「家族ミーティングシート」(表面)

編集後記

「イクメン休業」はまさしく「従業員エンゲージメント」の具現化であり、組織としてのレジリエンスにつながるということを学ばせていただきました。経営理念の浸透、具体的施策をトップダウンと、ボトムアップで取り組み、ESG経営を推進する「企業文化」の創造基盤になっていることが同社の組織としての強さだと認識した次第です。

聞き手:企業広報戦略研究所 上席研究員 中 憲仁