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電通PRトレンドレポート 各界のオピニオンリーダーと考える2021年の展望 ~①「働き方」篇~

働き方が変わると“コミュニケーションのルール”が変わる?~2021年に企業や団体が取り組むべき3つの問題(イシュー)とは~

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はじめに

 

新型コロナウイルス感染症(以下”コロナ”)の世界的流行は、生活者の行動や価値観を大きく変えました。電通パブリックリレーションズでは、この変化を踏まえ、2021年に企業や団体が取り組むべきコミュニケーション課題を各界のオピニオンリーダーと共に、先読みしていきます。

 


 

「働き方」篇

第1弾のテーマは、『働き方』。これまで1,000社以上の働き方改革を成功に導いてきた、株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長小室淑恵さんに、今起きている働き方の価値観変化と解決すべき課題について伺い、電通パブリックリレーションズが今後のコミュニケーションの変化を読み解きます。

「今回、コロナ対応が早かった企業は、コロナ禍以前から働き方改革を徹底してぶれずにやってきた企業。仕事のオンライン化やダイバーシティの推進などこれまでやってきたことが、社内外から改めて評価されています」と小室さんは指摘します。働き方の何が変わり、何が変わっていないのか。そして、どの方向へ変えていくべきなのか、3つのポイントでまとめました。

 

 

イシュー①: リアルな時代は良かった…は幻想 オンラインの利点を活用する

「オフィスでは30秒で指示できたが、オンラインでは生産性が落ちる」、これは管理職の方からよく聞く話です。しかし、短時間で口頭で伝えた指示は、部下からすると内容不十分でやりにくく、実は手戻りも多かったのではないでしょうか。なんとなくのイメージで伝えられることをリアルの良さとしているのであれば、自分の説明能力が欠けており、甘えです。オンラインで的確な指示出しができないのであれば、オフラインでもできていなかったのではないでしょうか?

ハンコを減らし、慣習を見直すことで、ビジネス上でリアルでなければいけないことはほぼなくなります。オンラインの制約を嘆く前に、移動時間の節約、遠隔地とのコミュニケーションなど利点を生かす視点が必要です。

 

#「見える化」などオンラインを制するスキルが必要
オフィスで遅くまで働くなど、頑張っているように見えた人が、リモートワークではちょっと…ということが発生しています。頑張っているように見えた働き方が、実は成果に結び付いていないからかもしれません。リモートワークでは指示もコミュニケーションも明確さが求められ、情報もグラフなどで見える化できる、ロジカルな人材が評価されるようになります。

 

#ジェンダーギャップの解消と人材のフル活用
オンライン化によって、これまでフルタイムがかなわなかった育児や介護による短時間勤務者は、出勤が必要なくなり、フルタイムと同等の労働が可能になります。これは実に、年間3カ月分の労働力増が期待できるようになるということです。

これまで半端な労働時間で、働き方でいうと一段低いところにいると思われていた人が、一人分の労働力として成立するようになります。彼ら/彼女らは、時間内で仕事を終える意識が高く、時間自律性も高い。計画や報告もしっかりやる。そういう人の方が仕事を任せて安心と、管理職の見る目も変わってきています。

 

#リアルなオフィスの役割も変化
オンラインの仕事が増えることで、オフィスは人が毎日来てそこで働く場所というよりも、組織の心理的安全性を高めるためのイベントや、ブランドを発信する場として使うなど、何かの目的のための場所に変わるでしょう。すでにそういう考え方を持ち、ブランドを象徴するスペースを作っていたりして、訪れただけで働き方改革に取り組んでいることが伝わる企業はありますし、オフィスを半分解約する企業なども増えています。

 

イシュー②: リモハラ・不規則生活…仕事マナー&管理のNew Normal対応問題

もちろん、オンライン化は良い面ばかりではありません。最近話題になっているのが、リモート会議でカメラをONにして顔出しを強制したり、個人の生活風景をネタにしたりするような「リモハラ」です。オンラインだからこそ起こり得るハラスメントへの対処など、働き方において今後新たなコミュニケーションルールやマナーができてくるでしょう。

#リモート会議での新マナー

リモート会議では、発言者以外がミュートにしているため、リアルな時代と同等の「へぇ」といった反応などが感じられず、発言が的を射ていないのではないかと不安になってしまうことも多くあります。

この不安を解消するため、当社ではリモート会議における「反応リーダー」を数名、会議の最初に設定しておく提案をしています。発言者が発表中に数名の反応リーダーがマイクをONにして発言に「へぇ」とか「なるほど」など反応することで、発言者は息遣いを感じ、安心して話すことができます。今後、このようなリモート会議を活性化させる工夫も生まれてくるでしょう。

 

#健康管理をアップデート

リモートワークが進むことで他にも懸念されるのは、健康管理問題です。リモートワークで、仕事の夜型化や長時間化が見られますが、睡眠時間を会社が管理するのは難しく、就業終了と開始のインターバルで管理するしかありません。欧州ではEUの労働基準で「最低11時間のインターバル」が定められていますが、今後はリモートワークを考慮に入れたインターバルの設定も重要になってくるでしょう。

 

 

イシュー③: 課題は常に「心理的な安全性」 昭和型の一律マネジメント脱却を

オンラインに移行できない。移行してもなかなかうまくいかない。これらの課題は小手先のIT化やツール導入だけでは解決できません。冒頭で挙げたように「コロナ対応が早かったのは、コロナ前から働き方改革に取り組んでいた企業」。ポイントの一つが「心理的な安全性」です。

#”仕事の属人化”はオンラインワークに向かない
「おまえにしかできない仕事」が評価され、競い合う。情報共有をしたら自分の価値がなくなると考え、情報や経験を自分の袖机やPCに秘伝のタレのようにしまい込む。そういう“仕事の属人化”は、離れて仕事をするリモートワークでは特に共有知をつくりづらく、生産性が低くなり、企業競争力も失われます。

 

#「心理的な安全性」をもって仕事や評価を見える化
仕事を見える化、共有化できている企業では、どの情報がどこにあるかを伝えることができているので、新人もオンラインで勉強でき、分からないことがあればオンラインで聞くこともできる。普段から組織に透明性があり、公平な評価が実施され、心理的安全性の高いコミュニケーションが取れている組織は、このような仕事の見える化が実現できています。

働く人の多様性や心理的安全性を重視し、マネジメントが1on1のコーチングをするというトレンドは、随分前から出てきています。仕事のオンライン化により、この流れはさらに加速していくでしょう。

 

#昭和型の一律マネジメントからの脱却がカギ
これからの時代、育児や介護をしながら働く人も増えてきます。そうなると一人が一つの仕事を完璧に全てやり切るということは難しくなります。365日健康で、風邪もひかないことも誰も保証できません。

多様性のあるチームでパスやヘルプをし合いながら、アウトプットを出すことがより重要な時代になります。そのためには情報共有はもちろんのこと、いざというときに人を助ける行動を多くした人が評価される、そうした評価形態をつくらなければなりません。
今までのやり方や、コミュニケーションの在り方を根本的に変えることが重要です。小手先のIT化、ツール導入では、仕事の属人化への対応はできないことが分かってきています。

あとがき:

【電通PRトレンド予測レポート編集部の視点】

従業員のコミュニケーション満足度(ES)が顧客満足度(CS)につながる

小室さんのインタビューから、働き方をアップデートさせるためには、技術的な対応だけでなく、働く人の意識改革が必要であり、意識改革を促すためには、制度・組織・コミュニケーションの基盤整備が必要であることが示唆されました。

・インターナルコミュニケーションのアップデートが重要に

今後は、フラットな体制や人間関係を実現し、従業員のコミュニケーション満足度を高められる組織が、よりよいサービスを生み出し、企業ブランディングや採用面においても社内外から評価されるようになるでしょう。

これまでの企業や団体のインターナルコミュニケーションは、縦割りに分断された組織体を部門を超えて風通しよくしようということが主流でした。これからは、組織の縦割りだけではなく、一人一人が異なる場所で働く組織体となることを見据え、新しい働き方に合わせたインターナルコミュニケーションによって、従業員のコミュニケーション満足度と心理的結束を高めていくことが大切です。

・一人一人の“見える化スキル“の向上が重要に

これまでは、空気が読めるなど、目に見えないあうんの呼吸や間合いの取り方も評価ポイントの一つとされてきた側面があります。これからは、ビジネスにおいて、よりオンラインコミュニケーションが主流になり得る中で、社内外に対して分かりやすく言いたいことを可視化できる力を持つビジネスパーソンや企業が求められます。

勤務時間や勤務形態に多様性のあるチーム編成で働くことが増えることが予想されることからも、オンライン上での意思疎通のための、一人一人の見える化スキルの向上は欠かせないものになるでしょう。

・家族やリアルな時間も大切に

小室さんが強調しているものの一つに、根本的な価値観・意識の変化があります。49.9%が「家族の重要性をより意識するようになった」と回答した内閣府調査を例に挙げ、ワーク・ライフバランスを重視する。「リアルなコミュニケーションを本当に必要とするのは、家族とのつながり、体験を通じて感性を育む時間」と小室さんは指摘します。オンラインでできる仕事はオンラインで。その効率化で出来た時間をオフラインでなければならない体験へ。これは働き方だけではなく、生き方にまで影響する大きな変化となります。

 

(監修・協力=ジャーナリスト・古田大輔)

 

 電通PR トレンド予測レポート 編集部
 

 植野 友生 TOMOMI UENO

 情報流通デザイン局 コミュニケーションデザイン部

 今井 慎之助  SHINNOSUKE IMAI
 情報流通デザイン局 ソリューションデザイン3部 兼 コミュニケーションデザイン部

 高橋 洋平 YOHEI TAKAHASHI
 情報流通デザイン局 コミュニケーションデザイン部