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電通PRトレンドレポート 各界のオピニオンリーダーと考える2021年の展望 ~②「暮らし」篇~

2021年の「暮らし」は“脱・受け身”がカギ!? キーワードは『主体性』と『ゆとり力』

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はじめに

 

新型コロナウイルス感染症(以下”コロナ”)の世界的流行は、生活者の行動や価値観を大きく変えました。電通パブリックリレーションズでは、この変化を踏まえ、2021年に企業や団体が取り組むべきコミュニケーション課題を各界のオピニオンリーダーと共に、先読みしていきます。

 


 

「暮らし」篇

第2弾のテーマは、『暮らし』。家族社会学を専門とし、家族や暮らしの在り方を研究されている立命館大学産業社会学部教授の筒井淳也先生に、コロナ禍を経て生まれた「暮らし」への新たな価値観や課題についてお伺いし、今後の変化を読み解きます。

 

 

調査がまだ十分ではないとの前提の上で、「今後もリモートワーク、在宅時間の増加は進み、家庭が職場化するだろう」と指摘する筒井先生。コロナの影響により家庭での暮らしに起きている変化を踏まえ、今後家庭で取り組むべき課題、その解決ポイント、さらに企業はどのように対応すべきかの、3つのポイントで先生にお聞きしました。

 

 

①仕事が入り込む家庭をどう変えていくか
“あえて口にする”新しいコミュニケーションが家族満足度を上げる

家族の在宅時間が増えたことで、「家族関係が良くなっている」という調査データがある一方、1割強の人が「うまくいかなくなっている」と回答している調査結果もあります。この背景には、“家族のバランス”の崩れがあるのではないかと推察しています。

 

#家族同士の距離感マネジメント

これまで私たちは、通勤・通学など与えられた行動パターンの中で流れに身を任せて生活することで、意識せずとも家族外の時間を持てていました。しかし、在宅が中心になると、家庭内の狭い人間関係にシフトします。互いの行動が見えることで、偏った家事・育児の分担問題ストレスなども増えるでしょう。そのため、一部の家庭では家族のバランスが崩れているのではないかと考えられます。

このような時代においては、個々が家族・家庭が円満になるための距離感を臨機応変に調整する力が必要になります。家のことをしっかりとする時間、また、適度な距離を保った方がよいと感じた時にはあえて外に出るなど、個々の自己マネジメント力が必要とされるでしょう。

 

#あえて口に出す関係へのシフト

これまで、世界的に見ても、日本人は言いたいことを口にしない“察する文化”を良しとする傾向がありました。しかし、在宅時間が長時間化し、仕事、家事・育児、家族時間など、家族との間で作業や時間の調整を行う必要性が増える中で、察してもらうことを期待するだけでは、互いにストレスをため込むことになります。

仕事が家庭に入り込んできている今、家であっても仕事と同様に、主体的に口に出して調整したり、自分の考えを伝えることが必要になってきたと思います。

 

#家庭が機能しなければ、仕事も成り立たない

これはあくまで仮説ですが、一度始まった在宅時間の増加は今後も恒常的に進むでしょう。家族関係、家事・育児、住まいなど、全てにおいて長期的に「きちんと機能する家族」を持たなければ、という価値観は加速していくのではないでしょうか。

これまでは、仕事機能と暮らし機能が分断されており、それぞれが個々に機能していればなんとかなったのですが、今後働く場所が家庭に移る傾向が続くならば、家庭が機能していなければ、仕事に直接の影響が出るという状況が生まれます。

住宅メーカーも家の機能が増えることになる変化に注目しています。これまでは仕事以外の生活ができればよかったけれど、そこに断片的にでも仕事が入った場合、根本的に住まいのつくりが変わる可能性もあります。

 

 

②仕事+家庭だからこそ、幸せな暮らしがより大切に
100%を目指さない“ゆとり”が新たなキーワード

日本人の完璧志向はいい面もある一方で、合理化を阻むという副作用もあります。例えば、顧客満足度100%を目指すために、手がかかる残り10%の顧客に、膨大な労働力をつぎ込むなどです。現在、働き方は生産性向上の観点から、合理化、省力化されてきていますが、“暮らし”においては、まだまだそうした考え方の導入が遅れています。家族の在宅時間が増える中で、暮らしも100%を目指さない柔軟性のある“ゆとり”をつくる工夫が必要です。

 

#暮らしの “ゆとり“とは一人一人が自由時間を持てること

共働き家庭が多い今、暮らしに1970年代のようなホテル並みの100%の質を求めている限り、省力化もゆとりも生まれません。いかにうまく100%にせずに仕事以外の空いた時間をつくるか、生活の時間をつくるかが大切です。重要なポイントとして、この場合の「仕事」という言葉には、家事・育児、家族のメンテナンス時間も含まれます。

それ以外の時間、究極的には仕事とも家族とも離れて一人で自由に使える時間をつくることが、家族それぞれの心のゆとりを生みます。特に若い世代はこれを贅沢につくってきたので、家庭に入るとなると躊躇します。家族と関わるときと関わらないとき、そうしたことがうまくコントロールできる状態がゆとりです。そのためにはあらゆる「仕事」の省力化がポイントになります。

 

#変化が多い社会だからこそ、長期的な視点も大切に

日々のゆとりと同じくらい、“長期的なゆとり”を準備することも大切になります。変化が多い社会において、今勤務している企業での働き方やその条件も変わってくるでしょうし、転職する可能性も大いにあります。リモートワークが主流になる人も増えてくるでしょう。

働き方が多様化する中で、一つの働き方を前提とした住まいやライフスタイルを決め切ってしまうと変化に対応できない事態が生じてしまいます。ある程度長期的な視点で、柔軟性やゆとりのある暮らしへの準備もこれからの家族には必要です。

 

#未婚者のゆとり確保には、既婚者以上に自立が重要に

日本社会の特徴の一つとして「経済的にもしっかりした家庭を持てないのであれば、家庭を持たない方がいい」という考えを持つ人が多いことから、私は一つの予測として、コロナによる先行きの読みづらい社会情勢が未婚化を進める可能性があるのではないかと考えています。

未婚者の方は、もし結婚せずに誰かと共同生活をしたいと考えるのなら、既婚者以上に自立性が求められます。例えば、徐々に増えてきているといわれるシェアハウスも、生活困窮状態であったり、人の手を借りなければ生活できない人は参加することができません。未婚者が増える社会においては、一人一人が精神的にも経済的にも自立していることが、より求められるようになるでしょう。

 

 

③企業側に必要な変化とは?
リモートワークは人材確保の特効薬になる? 企業側にも“ゆとり”が必要

コロナによってビジネスモデルの変革が迫られる企業にとって、いかにして優秀な人材を確保できるかは重要な課題であり、魅力的なワーク・ライフ・バランスを提供することが、人材確保のカギを握ります。その中でも特に、リモートワークは特効薬になるでしょう。

 

#仕事とプライベートの境界線への対応

企業はこれまで従業員がオフィスに通勤することで、一定の時間を仕事だけに従事してもらえました。しかし、リモートワークになると仕事と家の境界線が曖昧になります。例えば、会社で自分のデスクを掃除することは業務の一環として認められますが、家が職場になったときの掃除は業務なのか? 日中に洗濯物を干す時間を確保することは認められないのか? などです。

リモートワークでは、家庭で「会社の仕事」と「家事・育児」の両方を回すための時間が必要になりますが、それに対する企業の対応にはバラつきが出るでしょう。また、企業がオフィスに投資していたコストを削減できた分を、社員が働く場所である家庭に配分する仕組みが必要となりますが、現時点では行政の対応や法整備もされていません。このようなことへの対応も、リモートワーク下における人材獲得競争の切り札になるでしょう。

それぞれの企業が工夫や創造力を発揮できる余地があるエリアであるともいえるので、私はその動きを注視しています。

 

#管理職・リーダーが率先してニュースタイルづくりを

日本はいまだに同調圧力が強いため、それを逆手にとり、リモートワークなどのニューノーマル時代に合わせた新しい働き方や暮らし方を実際に浸透させるための手段として、社員を管理する立場の経営層やリーダー層から率先して実践する姿を見せていくのが効果的です。企業のトップの動きは、自社のワーク・ライフ・バランスに如実に反映されますので、これから特に注目して見られる分野になってくるでしょう。

 

#顧客向けコミュニケーションは変化に対応できる“ゆとり”を魅せる

これまでは、「幸せな家庭像」がある程度パターン化されて提示されてきました。今後、働き方や暮らし方が多様化する中で、家庭ごとに最適生活も変化してきます。企業の広報・広告コミュニケーションにおいても勝手に理想の家庭イメージを押し付けることは受け入れられなくなり、顧客の人生の変化に柔軟に対応でき得る“ゆとり”が垣間見えるようなイメージづくりが大切になるのではないでしょうか。また、多様性のある視点を生むためにも、現在女性管理職の増加の遅れが指摘されていますが、SDGsの観点からもジェンダー平等の視点を持ち判断をしていくことが大切になるでしょう。

 

 

あとがき:

【電通PRトレンド予測レポート編集部の視点】

“意識したゆとりと余白”が暮らしの質をアップデートする

筒井先生のインタビューから、ニューノーマル時代の豊かな暮らしのためには、生活者側も企業側も自発的にゆとりを生み出そうとする姿勢が必要であることが示唆されました。

・家事・育児の手助けとなる暮らしのアウトソーシング市場に注目

共働き世帯が増加する中で、リモートワークなどで家族の在宅時間が増え、必然的に家事の量も増える流れへの解決策として、海外ではスタンダード化している国もある“家事・育児のアウトソーシング”トレンドには引き続き注目が集まるでしょう。家事代行、料理代行、買い物代行などをはじめ、アウトソーシングサービスの幅も広がりを見せそうです。

作業自体の時間を短くする「時短」から、人に任せられることは「そもそもしない」、そして生み出すことができた時間で、家族との大切な時間を過ごすようなゆとりのあるライフスタイルが理想の姿になるかもしれません。

・男性社員の家庭参画・活躍状況も新たな企業評価指標に? 具体施策の発信が重要

日本には男性は外で仕事、女性は家事をするという固定観念が残念ながらまだ根強く残っています。しかし、働き方の変化によって、男性も女性も同じように働き、リモートワークなどで互いに在宅時間が増えるライフスタイルに変化する中で、企業を評価する視点の一つとして、男性社員がどれだけ家庭や暮らしにきちんとコミットできる会社であるのかという点も見られることになるでしょう。

家事、育児、介護などに対して働きやすい環境が整っている企業であることは従業員や顧客に選ばれる基準の一つになるであろうことから、今後、企業は具体的な施策の発信がより大切になってくるでしょう。

・1人暮らしの社員の孤立化を防ぐことも大事

リモートワークがスタンダード化すると、家族と同居していない人は、一日中自宅でオンライン会議の時間以外は誰とも話さずに黙々と働き続けるような人も増えるでしょう。家族と雑談したり、食事したりリラックスするゆとり時間を持つための強制的なオンオフスイッチが持ちづらく、働き過ぎなどの過労や、孤立化につながる可能性も懸念されます。

業務とは違う社員同士の交流や、雑談の機会を積極的につくるなど、社員一人一人の暮らしと心のゆとりを確保するために、企業が今後、積極的にサポートすべき分野になりそうです。

 

(監修・協力=ジャーナリスト・古田大輔)

 

 電通PR トレンド予測レポート 編集部
 

 植野 友生 TOMOMI UENO

 情報流通デザイン局 コミュニケーションデザイン部

 今井 慎之助  SHINNOSUKE IMAI
 情報流通デザイン局 ソリューションデザイン3部 兼 コミュニケーションデザイン部

 高橋 洋平 YOHEI TAKAHASHI
 情報流通デザイン局 コミュニケーションデザイン部