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電通PRトレンドレポート 各界のオピニオンリーダーと考える2021年の展望 ~⑨「PR」篇~

電通PRが読み解く、2021年のPRトレンド“3つのRe”とは?

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PR Trend

はじめに

いまだ収束が見通せない新型コロナウイルス感染症(以下“コロナ”)の世界的流行。電通パブリックリレーションズは、昨年末から各界を代表する9人のオピニオンリーダーと共に、コロナ禍がもたらした社会の変化、生活者の行動や価値観への影響から、2021年に企業や団体が取り組むべきコミュニケーション課題を先読みしてきました。

 

最終回に当たる今回は、9人のオピニオンリーダーのトレンド予測を踏まえ、電通パブリックリレーションズのメンバーが、「企業広報のニューノーマル」について議論した結果をお届けします。

 

 

トレンド予測レポート振り返り

左上から

働き方:株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵さん
暮らし:立命館大学産業社会学部 教授 筒井淳也さん
美容・ファッション:ファッションクリエーティブディレクター・編集者 軍地彩弓さん
メディア:ジャーナリスト・株式会社メディアコラボ 代表 古田大輔さん
食:株式会社ひめこカンパニー 代表 山下智子さん
Z世代:ビジネス・ブレークスルー大学 教授 斉藤徹さん/株式会社dot代表 冨田侑希さん
エンターテインメント:ParadeAll株式会社 代表取締役社長 鈴木貴歩さん
ヘルスケア:Coral Capital シニアアソシエイト 吉澤美弥子さん

参考: https://www.dentsu-pr.co.jp/pr/trend/

 

 

「PR」篇

最終回のテーマは、「PR」。これまで八つのカテゴリのオピニオンリーダーと先読みしたトレンドを踏まえて、電通PRのメンバーが、2021年のPR活動に欠かせないポイントを読み解きます。

2021年のPRに求められる“3つのRe”

1.Re:Framing 世の中・自社を捉え直す

2.Re:Connect 強い組織をつくるための再接続

3.Re:Think コミュニケーションの本質とアナログ感の再考

メンバー紹介

 

 谷 鉄平 TEPPEI TANI / 情報流通デザイン局 局長

NHKを経て2006年入社。PRディレクション、イシューマネジメント、ビジネス開発部署を経験。
2019年から、プランニングおよびPESOメディアプロモーションを担当する情報流通デザイン局へ。
受賞歴にアジア・パシフィックPRアワード(キャンペーン・オブ・ザ・イヤー、パブリックアフェアーズ部門、BtoB部門)や国際PR協会ゴールデン・ワールド・アワーズ(B2B部門)など

 

 植野 友生 TOMOMI UENO / 情報流通デザイン局 PRプランナー

暮らしや女性関連領域を中心に、幅広いクライアントのPR戦略立案を手掛ける。
受賞歴に、国際PR協会ゴールデン・ワールド・アワーズ(インフルエンサー・マネジメント部門)、2018 Global SABRE Awards WinnersTOP40(世界29位)など。

 今井 慎之助 SHINNOSUKE IMAI / 情報流通デザイン局 メディアプロモーター

2社のPR会社を経て、2014年より電通PRに入社。コンシューマー向け製品を中心に、メディアリレーションズ、特にテレビ/映像メディアを中心にPR業務を担当。PESOモデルをベースに情報流通構造の構築を手掛ける。

    高橋 洋平 YOHEI TAKAHASHI / 情報流通デザイン局 PRプランナー

通信キャリア、飲食品メーカーを主なクライアントとして、製品やサービスの統合コミュニケーションのプランニング〜実行や、企業・ブランドのコーポレート領域の各種コンサル・企画まで幅広く経験。現在は電通PR内のプランニング専門セクションで社会と企業・団体を結ぶコアイシュー・コアアイデア創出を起点にプランニングを行う。 

 

 

 

1.《Re:Framing 世の中・自社を捉え直す》

世の中の問題や関心と自分たちの強みを改めて結び付けられるかがより重要に

「コロナ」という未曽有のグローバルイシューが立ちはだかった2020年。社会へのアンテナを高く、広く張り、スピード感を持つ企業は、自社の強みとコロナイシューを掛け合わせたパブリックリレーションズで、自社の社会的役割を大きくアピールすることに成功しています。

2020年は“コロナ”や“ニューノーマル”をキーワードにしたPRコンテンツは、メディアも取り上げやすく、その中でも企画力のあるPRが成功を収めたといえるでしょう。

しかし、2021年は、大きな社会課題である“コロナ”からさらに、課題を細分化し、自社あるいは自社ブランドとの強い重なりを発見し、その企業ならではのストーリーを構築する戦略が必要になります。

 

 

#自社の存在意義やビジョンの発信で共感消費を促す

独自のストーリーを構築するには、いま一度自社やブランドのパーパス(存在意義)を問い直す必要があります。ミッション(組織が共通して持つ価値観)や中長期的目標となるビジョンは、自社の視点による、“我々は”を主語とした言葉ですが、パーパスは、社会に対して自社の果たすべき使命を明文化した“社会”を中心にした言葉です。

社会が大きく変化している今だからこそ、意義ある存在であり続けることを目指す「パーパス」を明確にし、それを社会的責任として発信していくことが重要になってくるでしょう。

 

#自社に関わる世の中の関心や問題へのアンテナを強化

社会が急速な変化を遂げ、生活・経済活動、教育、防災、医療など、社会課題が細分化する中、企業はこれまで以上に柔軟かつスピーディーな対応が求められます。

これまで課題の発見は、生活者の声などを定量的に把握・分析する世論の大きな声から見いだす手法が主流でしたが、これからは、声の大小にかかわらず小さな声からも自社の成長の源泉を見いださなくてはなりません。生活者インサイトは“聞く”から“狩る”の時代になるでしょう。

電通パブリックリレーションズでも、量的多数の分析では見えなかった生活者のインサイトに迫り、取り組むべきイシューを発見できるソリューションの開発を推進しています。

 

《ソリューション① ソーシャル分析の新手法『ソーシャルハンティング』》

『ソーシャルハンティング』は、生活者の本音があふれているソーシャルメディア上から、企業や商品のコミュニケーションに役立つ声を「捕獲(ハンティング)」するという意味。声の多寡ではなく、声の内容に着目し、“感情が発露している”あるいは“トレンドの兆しを感じる”ツイートを捉え、企業や商品のコミュニケーションに活用するプローチをとっている。電通パブリックリレーションズでは、『ソーシャルハンティング』によってインサイトに効果的に迫る方法を体系化し、Twitterに本音として表れやすい、現状に対する不満を「7つの鬱憤 WARPATH」として整理。鬱憤の視点を変えることで、これまで見えなかったインサイトやイシューの兆しが見えてきます。

広報会議「データで読み解く企業ブランディングの未来」ソーシャルハンティング (2020年10月号)

 

 

 

《ソリューション② インサイト×PRプログラム 『News Value Sprint』》

電通パブリックリレーションズは、「生活者インサイト発掘→生活者に提供する新価値創造→コアアイデアの創出」のプロセスを1日で体験できる独自の研修プログラム『News Value Sprint』を、インサイトリサーチによるアイデア開発支援を手掛けるデコムと共に共同開発しました。

デコムが得意とする“n=1”の生活者起点のインサイト発掘法と、電通PRが得意とする“世の中”視点で社会の関心を高める「コアアイデア」を創出する思考法を融合することで、時代の変化とともに多様化する生活者のインサイトと、世の中の動きの両方を捉えながらブランドの新価値を発掘するメソッドが習得できます。

https://www.dentsu-pr.co.jp/releasestopics/news_releases/20201225-2.html

2.《Re:Connect 強い組織をつくるための再接続》
リモートワークで懸念される社員のエンゲージメントの希薄化、HRを高めるインターナルコミュニケーションの進化と深化が重要に

 

従業員を重要なステークホルダーとして捉え、組織の実行力を高めるインターナルコミュニケーションが、近年の広報トレンドとなっています。さらに、コロナ禍でリモートワークが常態化したことから、社員のエンゲージメントや生産性の低下を懸念し、インターナルコミュニケーションの取り組みを加速させる企業が増えていることが、電通パブリックリレーションズの調べから分かっています。
また、コロナ禍での社会生活が長引く中、心身の不調や家族の事情などにより、離職や休職に追い込まれるケースも増加。足元のHR(Human Resource)も揺るぎかねない状況の中、企業は今後の経営の安定や事業の成長のためにも、従業員とのエンゲージメントを深める取り組みが、より重要になってくるといえるでしょう。

 

電通PR独自調査「新型コロナウイルス(COVID-19)への対策・対応に関する緊急アンケート」

(第1回調査:2020年5月発表  第3回調査:2020年8月発表)

 

電通パブリックリレーションズでは、2019年12月に「インターナルブランディング®モデル」を開発しています。同モデルでは、エンゲージメント※を強化するキードライバーが「理念」であり、それを下支えする要素として、「Motivation」「Condition」「Relation」の三つを定義しています。
2021年のインターナルコミュニケーションを展望するに当たり、各キーパーソンの発言も踏まえながら、三つの要素で読み解きます。

*「インターナルブランディング®」は、電通パブリックリレーションズの商標登録です。

※エンゲージメント:企業と社員の絆を表し、「信頼」「愛着」「誇り」「貢献」を指標として定義。


#Motivation→自律分散型人財の育成に向け理念の浸透を

働き方篇で指摘された、仕事の属人化の回避と共有の仕組みづくり。リモートワークの広がりにより、一人一人が異なる場所で働く組織体へと移行する中、個々が自律分散型で能力を発揮することが求められます。しかし、個々がバラバラの方向を向いていたのでは、組織の力にはなりません。社員一人一人が自社の理念を理解した上で、会社の描くストーリーを体現する人財となるように、いま一度、企業理念やパーパスの理解・浸透を図る必要があるでしょう。

 

#Condition→心理的安全性を高めるため、社員のインサイトに向き合い全社的な運動体に

働き方篇でも触れられた「心理的安全性」の重要性。透明性のある組織、公平な評価、また、社員のインサイトを把握するための対話は、リモートワーク下においてより重要になります。

また、社員のリアルなインサイトに基づく企業の取り組みとして、制度づくりから社内イベントまでさまざまなレイヤーでのアプローチが想定されますので、インターナル広報=経営と捉え、経営企画、広報、人事など各セクションが連携しながら、全社的な運動にしていくことが重要だといえるでしょう。

 

#Relation→インターナル×エンターテインメント「エンターナルコミュニケーション」の開発を

Z世代篇では、非言語・非数値のコミュニケーションの工夫が提言されました。オンラインでのコミュニケーションは、ノンバーバル(非言語)による情報伝達が難しく、伝える、伝わる工夫はZ世代に限らず、あらゆるインターナルコミュニケーションにも求められます。働き方篇で挙げられたリモート会議の「反応リーダー」も、ノンバーバルコミュニケーションの工夫の一つ。電通パブリックリレーションズでもアジェンダを決めない雑談のオンライン化を社内で進めています。

またエンターテインメント篇では、「DXによる体験設計がエンゲージメントを高める」と示唆がありました。これまでのインターナルコミュニケーションメディアから一歩進めて、参加体験を促す、人の温度感・手触り感がある、といったインターナルにエンターテインメント視点を持たせた「エンターナル」なコミュニケーション施策がこれからの時代には有効だといえるでしょう。すでに、媒体社とのコラボレーション、第三者を交えた対談番組企画など、工夫を凝らしている企業も見られます。

 

3.《Re:Think コミュニケーションの本質とアナログ感の再考》

デジタル社会の進展で情報過多となる中、さらにコロナの影響により、仕事がテレワーク中心に、またエンターテインメントやイベントもデジタル化された視聴覚情報が中心となりました。私たちの脳には過剰な負荷がかかっていると推測されます。メディア篇でも言及されたように「フェイクニュース」の問題そしてそれに対する対抗力が強まっている旨を紹介しました。情報とその発信者に対する信頼性が求められているのはもちろんですが、デジタル化に気を取られ忘れがちなものがあります。手触り感や温度感のようなノンバーバルなコミュニケーションがもたらす体験です。

DXに向けた大きな流れは必然ではありますが、だからこそテクノロジーに振り回されず、コミュニケーションの本質の再考が今後重要になるのではないでしょうか。

 

#ステークホルダーリレーションズ

コロナ禍の2020年、単に消費を促すプロモーションではなく、“母の月”や“さきめし”のように、誰かが誰かを思いやる気持ちを行動にするプロモーションが一層多くの人の共感を呼びました。
ある意味コロナ禍は、ステークホルダーを多面的に捉え、協調を図ることで良好な関係を築く、ステークホルダーリレーションズの重要性を認識するきっかけになったといえるでしょう。
企業の広報においても同様に、これからはインターナル、メディア、生活者にとどまらず、あらゆるステークホルダーと向き合った広報活動が求められます。
こうした広報活動を通じたステークホルダーとの良好な関係づくりは、企業に対する信頼や親近感を高めるだけでなく、企業価値向上に向けた源泉になると考えられます。

 

広報活動においてオンライン化を検討すべきターゲット・オーディエンス(※電通PR作成)

 

#“顔が見える”が生む安心感と良い距離感

 “手触り感” “共体験” “個人の信頼”…これまで発表したトレンドレポートで各業界のオピニオンリーダーたちが挙げたキーワードの一部です。デジタル化、オンライン化が加速したコロナ禍での生活において、フィジカルにもメンタルにも“温度感を感じさせるコミュニケーション”の大切さが示唆されました。

広報活動において、例えばオンライン発表会が常態化しています。体温・熱量が伝わりづらいオンラインだからこそ、物理的にも心理的にも『顔が見える』ことを意識する必要があります。メディア篇で、米国では記者が自社メディアではなく、個人として情報発信をし、それを求める読者が増えているという事例を紹介しました。企業の広報活動においても、生活者から同様のことが求められていると思います。SNSなどのオウンドメディアで顔が見えるようなオープンマインド(心理的に顔が見える)活動を意識する必要も出てくるでしょう。前述のオンライン発表会もオンラインだからこそ、生活者に直接届ける・参加できるコンテンツとして制作することもできます。また、対メディア、対生活者へのリアルコミュニケーションや移動の制限が余儀なくされる中、美容・ファッション篇で示唆されたローカル性や店舗従業員の顔を生かした広報活動も新たな活路を開く可能性があります。「従業員全員広報活動」を実現し、成功させるためにも、企業のパーパスの共有は欠かすことができません。

 

#手法が変わってもコミュニケーションの本質は変わらない

コロナ禍で加速した企業のコミュニケーション活動のDX化ですが、急速であったが故にコミュニケーションの本質を見失ってしまいがちです。

完璧なオンライン発表会をいわば映画の上映会と捉えてしまい、新製品の映像コンテンツづくりにばかり没頭したり、中には発表会全体が本当に完パケ映像素材になっている事例も見られました。

しかし、本来記者発表会は、製品情報を伝えるだけの場ではなく、記者とのコミュニケーションの場であり、リレーションづくりの場でもあります。見た目の完璧なデジタル化だけを求めて、コミュニケーションの本質が抜け落ちていては、空回り広報だといえるでしょう。きれいにブランディングされた映像ではなく、あえて広報担当者が顔を出して話す、チャットではなくリアルな音声による質疑応答、こうしたわずかな工夫が、感情の機微に影響します。それがコミュニケーションです。

長引くコロナ禍において広報のDXが進んでいますが、いま一度コミュニケーションの本質に立ち返り、広報のDXを見直す必要があるかもしれません。

 


【2021年のPRに求められる“3つのRe” ポイントまとめ】

1.Re:Framing 世の中・自社を捉え直す

#自社の存在意義やビジョンの発信で共感消費を促す

#自社に関わる世の中の関心や問題へのアンテナを強化

 

2.Re:Connect 強い組織をつくるための再接続

#Motivation→自律分散型人財の育成に向け理念の浸透を

#Condition→心理的安全性を高めるため、社員のインサイトに向き合い全社的な運動体に

#Relation→インターナル×エンターテインメント「エンターナルコミュニケーション」の開発を

 

3.Re:Think コミュニケーションの本質とアナログ感の再考

#ステークホルダーリレーションズ

#“顔が見える”が生む安心感と良い距離感

#手法が変わってもコミュニケーションの本質は変わらない